ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

御品書き

このブログは刀剣乱舞および文豪とアルケミストの二次創作小説を置いています。 サイト独自設定がありますので苦手な方は注意してください。 話の流れに関しては公式ゲームのプレイ状況をもとに書いておりますので、キャラの登場順、イベントの状況などはそ…

猫 ~徳美組~

※基本、刀たちがじゃれ合っているだけの話です。シリアスはどこかへ出陣しました。 俺たちが下りたつことが許された阿津賀志山は夏のはずだ。だがぴりぴりと肌を刺激する嫌な感じは何だ。 夏草の生い茂る草地に漂うもやっとした空気の間を吹き抜ける冷たすぎ…

呼び名 ~堀川国広~

本丸の裏手から細く続くけもの道を慣れた足取りで登ってゆく。普通の足であればけして速くは進めない険しい山道でも、まるで足に翼が生えたかのように軽々と駆けあがっていった。 初夏の陽気と日差しを存分に受けて天を覆うように葉を茂らせる木々。葉の間か…

武器 ~鯰尾・長谷部~

【注】構想開始時よりもキャラ暴走してしまいましたので、気になる方は引き返してください。 「本日十七時をもって秘宝の里への扉が開かれたと政府から連絡があった。分かっているとは思うが当本丸の決め事により、楽曲が解放された刀自らが隊長となり必要数…

依頼 ~三日月・山姥切~

雨の気配はもうすぐそこまで迫っている。 どんよりとした黒い雲の切れ目より時折姿をのぞかせるおぼろの月。恥らうようにわずかな姿だけを垣間見せながら、地に在るものには決して手の届かぬ空へと視線を誘う。 湿り気を帯びた大地。じんわりと立ち上る水の…

主と刀と ~手紙~

「主、いるか。悪いが急ぎでこの書類の決裁を頼む・・・!?」 審神者の部屋に踏み入れた山姥切は足裏に何かを踏みつけた感触を感じて、つい後ずさった。足元をよく見れば積み重なった紙が幾枚も畳の上に散乱している。 まだ墨も乾ききっていないその一枚を…

出立 ~歌仙兼定~

「長い旅になるとはいえ、あまり荷物を増やすのも雅ではないかな。お小夜にも荷物が多すぎると怒られたことだし」 顎に指先をかけて考え込んでいた歌仙兼定は、一旦は行李に入れかけた身のまわりの道具を一つ一つ手にして長考し吟味しながら丁寧にえり分けて…

留守番 ~新撰組~

「・・・落ち着かん」 頑なに沈黙を守り続けてやっと発した言葉がそれだった。 縁側で乱雑に胡坐をかいて庭先をただ睨みつけた姿のまま、蜂須賀虎鉄を見送ってよりずっと長曽根虎鉄はそこにいた。 何をするでもない。ただ何をしていようとどうしても落ち着か…

江戸城 ~蔵の一振り~

「また今年も政府は厄介なものを本丸に送り込んできてくれたな」 縁側の廊下でしかめっ面で腕を組んだへし切長谷部は庭先を忌まわしげに睥睨した。 春の訪れをいち早く告げる桜の花も今年は慌ただしく散っていった。 今の季節、いつもならば本丸の縁側に暖か…

極 ~初期刀組~

目の前を小さい何かが横切る。 足元からいたずらに風が庭先から本丸の廊下を駆け抜けた。 再び横切ろうとしたそれを手のひらで捉える。目の前で広げて現れたのは一片の淡い紅色の花びらだった。 すぐさまそれは乱れ吹く春のそよ風にかすめ取られる。 庭の向…

破片 ~第一会派~

壊れ、崩れ、言葉はこなごなに、くだ、け、て、ゆく。 多くの人々に時を渡って読みつがれ、あまたの空想の果てに形作られた概念はもう消えかかっている。 初めから何もありはしない。僕らの文学はそれほどまでに儚いものだったのか。 本の中へと降り立った秋…

再戦 ~厚・薬研~

星も輝かぬ闇夜に沈む巨大な城郭は息をひそめて静まり返っている。天に上る月もなく、あたりは深遠の闇に隠れていた。 この国を治めるこの城のまわりには普段ならば見回りの警備の武士や酔客目当ての屋台などがちらほら見かけるのだろうが、彼らのいるあたり…

主と刀と ~厚藤四郎~

「おや、これは腕が出てしまっているね」 正装用の着物を主の背にあてて具合を確かめていた歌仙兼定が少し驚いたようにつぶやいた。本日はしまっておいた主のめったに使わない礼装や外出の着物の状態を点検するにあわせて、居合わせていた主に試着してもらっ…

未想 ~山姥切・三日月~

『その想いの名はまだ知らず』 ※ほんわか腐表現あります。 タイトル通りみかんばなので無理という方は回避してください。 暗くよどんだ雲から舞い落ちる雨はいまだ降りやまず、さらさらと落ちてゆく細かな音は心までも沈ませる。 この季節は嫌いだ。 なぜと…

出陣組 ~小夜・骨喰・和泉守~

乱戦の最中、鋭利な刃が脇をすり抜けた。早い。影を目で追って向いたときにはもう横を通り過ぎていた。 力任せに振り下ろされた刃を頭上で迎え撃っていた小夜左文字は駆けつけることもできず、ただ視線を向けるしかできなかった。 狙われたのはすでに先に放…

留守組 ~山姥切・三日月~

中庭に堂々とそびえたつ鳥居の内が淡い光を放ちながら歪んでゆく。 準備が整うまでその場にじっと居並んでいた者たちへ一際背の高い者が何やら声をかけたらしい。何を言っているかは遠くてここまでは届かない。だがその顔が戦場へと向かうために高揚している…

相棒 ~堀川・和泉守~

甲高く響いた弓音に堀川国広は顔を上げた。自分めがけて迫りくるおびただしい矢の群れが顔面に迫る。 出陣先の時代に降り立つとすぐに時間遡行軍に遭遇し、迷う暇などなくすぐさま戦闘態勢に入った。倒すべき相手を見定め直ちに矢や銃で相手を威嚇する。急所…

修行 ~大倶利伽羅~

わざわざ正面の玄関から出る必要もない。 出陣する部隊の出入りが激しい本丸の母屋の入り口は常に誰かがいるだろう。もし誰かと会えばあいつらは必ず何をしているのかと話しかけてくる。そうなったら面倒だ。 話しかけるなと睨みつけても最近は誰もひるまず…

主と刀と ~年の瀬~

※創作審神者出没。個人的見解有りなので苦手な方は回避を。 白く平らにならされた灰の上に組まれた黒い炭が細かな裂け目よりじんわりと赤い光をにじませる。音もなく密やかに燃え上がる炭の明かりはほのかな温かさで身体を照らしゆっくりと温めてくれた。 静…

江戸城 ~毛利・和泉守~

「元気ねえじゃねえか。もうへばったか? 疲れたんなら隊長は変わってやってもいいぜ」 にやっと笑って和泉守兼定が手をさし延ばしてきた。 その上から目線にむっとして毛利藤四郎は差し出された手から目を逸らした。地面に手を付けて自力で立ち上がる。顔を…

江戸城 ~蔵~

「また本丸の庭に妙なものが。これは・・・蔵なのか?」 本丸の正面の大きな庭に現れた見知らぬ建造物を呆然と眺めながら山姥切は呆れたようにつぶやいた。 入り口の重厚な鉄製の扉に大きな錠前をつけた巨大な蔵が四つ、いつの間にかそびえたっていたのだ。…

仮装 ~謙信景光~

「わー、似合う似合う。かわいいよ!」 手を叩いて乱藤四郎が満面の笑顔で喜んだ。 頭につけられた小さな角のような飾りを触りながら謙信景光は戸惑っていた。背中にはコウモリの形に似た小さな黒い翼をつけ、身体の後ろには先が矢印のようになった尻尾まで…

側仕え ~巴形薙刀~

「なんだ、こいつは」 一目見るなりこちらへの敵意を全く隠さないその者は大股で近づくと、手をかけて乱暴に俺と主を引き離そうとした。 「なにをする。俺は主の傍に使えるのが役目だ。下がれ」 「それは俺の役目だ。貴様こそ離れろ」 邪魔だなと手にしてい…

素質 ~篭手切江~

「私は篭手切江。郷義弘の打った脇差です。これからよろしくお願いします」 両の手を脇にピシッと揃えて背筋を伸ばし、思いっきり前へ身体を折り曲げ最大限のお辞儀をした。あいどるはまず挨拶が大事だ。特に自分よりもこの本丸にいるという先輩たちにはまず…

兄弟 ~虎鉄~

「あーあ、今日も兄ちゃんたちを仲良くしてもらおうとしたけどだめだったよ」 部屋の中央に置かれた座卓の上に浦島虎鉄は倒れ込むように突っ伏した。隣に座っていた物吉貞宗が心配そうに彼を眺める。 顕現した刀の数が多くなったこの本丸では大広間だけでは…

食事 ~徳永・中野・小林~

「うまかー。こぎゃんうまか唐揚げ食べたことなか!」 ほどよくきつね色に揚がった大ぶりの唐揚げを大きな口を開けて頬張った徳永直は満面の笑顔でそのうまさを顔全体でしめしていた。 一個食べる食べに感嘆の声を上げる徳永とは反対に、食事中は食べること…

修行 ~後藤藤四郎~

「薬研、こっち来て俺と一緒に立ってくれよ」 大きなせんべいを口にくわえていた薬研が振り向くと、緊張した面持ちでなぜか神妙な顔をしてこちらを見下ろしている後藤と視線が合った。 いつも騒々しい奴が珍しくおとなしくしている。何でそんな真面目な顔を…

狩り ~兎捕獲部隊~

「つまりうさぎとやらを力づくで捕獲して団子を奪えばいいんだな。それだけだな」 剣呑に目を細めた山姥切国広は主に強い口調で確認する。正座した膝の上に拳を握りしめている彼の目元にはどことなく疲れが残っていた。戦力拡充の出陣が続いていたため、昨日…

月の宴 ~歌仙兼定~

朝餉の片づけが終わったころ、主から部屋に来てほしいと伝言を伝えられた。 この僕に来てほしいというとどのような用件だろう。庭から流れ込む風が肌に幾分涼しくなってきたから、夏の薄い着物を片付けるのを手伝ってほしいということだろうか。それとも主の…

鍛刀 ~厚・山姥切~

俺は厚藤四郎。 粟田口の短刀で歴代の主はけっこう有名らしくて、俺自身もいろんな家を渡り歩いてたんだ。 今の主のところに来てから人間みたいになっちまったけど、これはこれでおもしろいからいいや。それにこの本丸には俺と同じように人の器をもらったた…