ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

刀剣乱舞

留守番 ~新撰組~

「・・・落ち着かん」 頑なに沈黙を守り続けてやっと発した言葉がそれだった。 縁側で乱雑に胡坐をかいて庭先をただ睨みつけた姿のまま、蜂須賀虎鉄を見送ってよりずっと長曽根虎鉄はそこにいた。 何をするでもない。ただ何をしていようとどうしても落ち着か…

極 ~初期刀組~

目の前を小さい何かが横切る。 足元からいたずらに風が庭先から本丸の廊下を駆け抜けた。 再び横切ろうとしたそれを手のひらで捉える。目の前で広げて現れたのは一片の淡い紅色の花びらだった。 すぐさまそれは乱れ吹く春のそよ風にかすめ取られる。 庭の向…

再戦 ~厚・薬研~

星も輝かぬ闇夜に沈む巨大な城郭は息をひそめて静まり返っている。天に上る月もなく、あたりは深遠の闇に隠れていた。 この国を治めるこの城のまわりには普段ならば見回りの警備の武士や酔客目当ての屋台などがちらほら見かけるのだろうが、彼らのいるあたり…

主と刀と ~厚藤四郎~

「おや、これは腕が出てしまっているね」 正装用の着物を主の背にあてて具合を確かめていた歌仙兼定が少し驚いたようにつぶやいた。本日はしまっておいた主のめったに使わない礼装や外出の着物の状態を点検するにあわせて、居合わせていた主に試着してもらっ…

未想 ~山姥切・三日月~

『その想いの名はまだ知らず』 ※ほんわか腐表現あります。 タイトル通りみかんばなので無理という方は回避してください。 暗くよどんだ雲から舞い落ちる雨はいまだ降りやまず、さらさらと落ちてゆく細かな音は心までも沈ませる。 この季節は嫌いだ。 なぜと…

留守組 ~山姥切・三日月~

中庭に堂々とそびえたつ鳥居の内が淡い光を放ちながら歪んでゆく。 準備が整うまでその場にじっと居並んでいた者たちへ一際背の高い者が何やら声をかけたらしい。何を言っているかは遠くてここまでは届かない。だがその顔が戦場へと向かうために高揚している…

出陣組 ~小夜・骨喰・和泉守~

乱戦の最中、鋭利な刃が脇をすり抜けた。早い。影を目で追って向いたときにはもう横を通り過ぎていた。 力任せに振り下ろされた刃を頭上で迎え撃っていた小夜左文字は駆けつけることもできず、ただ視線を向けるしかできなかった。 狙われたのはすでに先に放…

相棒 ~堀川・和泉守~

甲高く響いた弓音に堀川国広は顔を上げた。自分めがけて迫りくるおびただしい矢の群れが顔面に迫る。 出陣先の時代に降り立つとすぐに時間遡行軍に遭遇し、迷う暇などなくすぐさま戦闘態勢に入った。倒すべき相手を見定め直ちに矢や銃で相手を威嚇する。急所…

修行 ~大倶利伽羅~

わざわざ正面の玄関から出る必要もない。 出陣する部隊の出入りが激しい本丸の母屋の入り口は常に誰かがいるだろう。もし誰かと会えばあいつらは必ず何をしているのかと話しかけてくる。そうなったら面倒だ。 話しかけるなと睨みつけても最近は誰も気にもし…

主と刀と ~年の瀬~

※創作審神者出没。個人的見解有りなので苦手な方は回避を。 白く平らにならされた灰の上に組まれた黒い炭が細かな裂け目よりじんわりと赤い光をにじませる。音もなく密やかに燃え上がる炭の明かりはほのかな温かさで身体を照らしゆっくりと温めてくれた。 静…

江戸城 ~毛利・和泉守~

「元気ねえじゃねえか。もうへばったか? 疲れたんなら隊長は変わってやってもいいぜ」 にやっと笑って和泉守兼定が手をさし延ばしてきた。 その上から目線にむっとして毛利藤四郎は差し出された手から目を逸らした。地面に手を付けて自力で立ち上がる。顔を…

江戸城 ~蔵~

「また本丸の庭に妙なものが。これは・・・蔵なのか?」 本丸の正面の大きな庭に現れた見知らぬ建造物を呆然と眺めながら山姥切は呆れたようにつぶやいた。 入り口の重厚な鉄製の扉に大きな錠前をつけた巨大な蔵が四つ、いつの間にかそびえたっていたのだ。…

仮装 ~謙信景光~

「わー、似合う似合う。かわいいよ!」 手を叩いて乱藤四郎が満面の笑顔で喜んだ。 頭につけられた小さな角のような飾りを触りながら謙信景光は戸惑っていた。背中にはコウモリの形に似た小さな黒い翼をつけ、身体の後ろには先が矢印のようになった尻尾まで…

側仕え ~巴形薙刀~

「なんだ、こいつは」 一目見るなりこちらへの敵意を全く隠さないその者は大股で近づくと、手をかけて乱暴に俺と主を引き離そうとした。 「なにをする。俺は主の傍に使えるのが役目だ。下がれ」 「それは俺の役目だ。貴様こそ離れろ」 邪魔だなと手にしてい…

素質 ~篭手切江~

「私は篭手切江。郷義弘の打った脇差です。これからよろしくお願いします」 両の手を脇にピシッと揃えて背筋を伸ばし、思いっきり前へ身体を折り曲げ最大限のお辞儀をした。あいどるはまず挨拶が大事だ。特に自分よりもこの本丸にいるという先輩たちにはまず…

兄弟 ~虎鉄~

「あーあ、今日も兄ちゃんたちを仲良くしてもらおうとしたけどだめだったよ」 部屋の中央に置かれた座卓の上に浦島虎鉄は倒れ込むように突っ伏した。隣に座っていた物吉貞宗が心配そうに彼を眺める。 顕現した刀の数が多くなったこの本丸では大広間だけでは…

修行 ~後藤藤四郎~

「薬研、こっち来て俺と一緒に立ってくれよ」 大きなせんべいを口にくわえていた薬研が振り向くと、緊張した面持ちでなぜか神妙な顔をしてこちらを見下ろしている後藤と視線が合った。 いつも騒々しい奴が珍しくおとなしくしている。何でそんな真面目な顔を…

狩り ~兎捕獲部隊~

「つまりうさぎとやらを力づくで捕獲して団子を奪えばいいんだな。それだけだな」 剣呑に目を細めた山姥切国広は主に強い口調で確認する。正座した膝の上に拳を握りしめている彼の目元にはどことなく疲れが残っていた。戦力拡充の出陣が続いていたため、昨日…

月の宴 ~歌仙兼定~

朝餉の片づけが終わったころ、主から部屋に来てほしいと伝言を伝えられた。 この僕に来てほしいというとどのような用件だろう。庭から流れ込む風が肌に幾分涼しくなってきたから、夏の薄い着物を片付けるのを手伝ってほしいということだろうか。それとも主の…

鍛刀 ~厚・山姥切~

俺は厚藤四郎。 粟田口の短刀で歴代の主はけっこう有名らしくて、俺自身もいろんな家を渡り歩いてたんだ。 今の主のところに来てから人間みたいになっちまったけど、これはこれでおもしろいからいいや。それにこの本丸には俺と同じように人の器をもらったた…

秘宝の里 ~獅子王~

「これで終わりっと。玉はちゃんと残さず拾ったか?」 敵の血が付いた刀を一振りすると赤い粒子が宙に散った。敵の姿が消えるとともに、刃を赤く染めていた敵の血もまるでなかったかのように消える。銀色の輝きを取り戻した刀を高く掲げて再び鞘に収めた。 …

秘宝の里 ~膝丸~

「いつまでおちこんでいるんですか」 本丸の鳥居から秘宝の里に移動してもまだ沈んでいる膝丸に今剣は檄を飛ばす。 周りを隔絶させる深い霧が二人の周りを取り囲む。ここに一緒に飛んできた部隊の者たちの顔も少し離れると濃霧の向こうに隠れてぼんやりとし…

秘宝の里 ~髭切~

「ふうん、それは僕が隊長をやるってこと?」 先ほど引いたくじの細長いこよりを指先でもてあそびながら、髭切は目の前に座る小柄な人間の少年に問いかけた。髭切の引いたくじの先にある数は肆、つまり四番目となる。 彼はこの本丸に集う刀の付喪神たちを人…

秘宝の里 ~山伏国広~

「まったく、鶴丸殿には驚かされてばかりです」 これで幾度目の溜息か、一期一振は傍らを歩く鶴丸国永に苦言を申し立てた。 本丸に帰投した鶴丸たちの部隊は主への報告のために長い廊下を連れ立って歩いていた。中央の表の建物を抜け、審神者の部屋のある一…

秘宝の里 ~江雪左文字~

「どうしました、お小夜。浮かない顔をして」 心配そうな声にふと顔を上げる。 戦装束を着込んで出陣の時を部屋で座って待っていた小夜はやって来た兄弟の宗三左文字を見上げた。 「宗三兄様。いえ、なんでもありません」 「なんでもなくはないでしょう。そ…

秘宝の里 ~鶴丸国永~

「引け、鶴丸国永」 有無言わさぬ強い声音と共に突き出されたそれを、鶴丸国永は何事かとじっと見つめる。きつく握りしめられた拳から突き出した一本の白いこより。何の意味がある、これは何かの罠か、それとも驚きへの招待状か。 だがそれを持っているのが…

新入り ~ソハヤ・村正~

「江戸城で発見した千子村正だが、奴の教育係は貴様に頼むぞ。ソハヤノツルキ」 出陣から戻るなり主の部屋へ呼ばれたソハヤはへし切長谷部にそう告げられた。 長谷部の文句を許さぬ厳しい口調は相変わらずだ。 堅苦しくないのかねといつも思うが、いつもそば…

修行 ~加州・堀川~

とある部屋と廊下を仕切る障子を半分くらい引きあけて、加州はひょいっと中を覗き込んだ。 部屋の中は無駄なものもなく、きちんと片づけられているのはおそらくこの部屋の持ち主がきれいに整えているからだろう。こちらを背にしてじっと部屋の奥の襖を見つめ…

酒宴 ~初期刀組~ =刀と主と=

夕餉の後、お決まりのように始まったにぎやかな酒盛りに加わる気がおきなかった加州は楽しげに酒をかわしあう新撰組の仲間たちを置いてそっと食堂の広間を後にした。 本丸で最も大きな表の建物の中に食堂がある。この建物は作戦会議室や刀装などを作る作業場…

月は猫と遊びて

注】いつもの本丸とは別設定の通称紅本丸の話です。 初期刀は歌仙兼定で、三日月宗近が初期に顕現しています。 ※ちょっと修正しました。 先ほどまで淡い色合いの雲の隙間からわずかな光をこぼれ落していた空も、今見上げればどんよりとした雲が垂れ込めて重…