ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

御神力 ~石切丸~

 紙垂が大きく左右に振れながら幣が払われる。室内にしつらえられた白木の神棚に向かって石切丸は厳かに祝詞を唱え、深く一礼した。

 そして正座したまま手を使って静かに後ろに向き直る。

「主、審神者としての修行の成果はいかがですか?」

 両掌を胸のあたりで祈るように合わせていた主は、閉じていた瞼をゆっくりと開いた。

「まだ自分の力を制御できていないと、師であるかの御方に言われました。これだけ力があるのにもったいないそうです。まずは術を覚えるよりも、今できていることを完璧に自分のものにするのが先だと。たしかに私はまだ霊力が時折不安定になる」

 白い袍に濃い紫の袴をはいた主は自嘲ぎみな笑顔を浮かべる。

「この本丸の結界ですら満足に結ぶことができない。御神刀であるあなたや太郎太刀たちの力を借りてしまっている現状ですからね。私は審神者としてまだ未熟でしか・・・」

 主の言葉を黙ってきていた石切丸だったが、一つ息を吐くと静かに首を振った。

「それは違いますね。我々刀の付喪神である刀剣男子はあなたの力によってこの本丸に顕現し存在しうるのです。戦うための力もあなたの霊力があればこそ。結界が不完全になってしまうのは審神者としてのあなたの力が足りないのではなく、逆にありすぎるからです。主の身体からは常に収まりきらない霊力が零れ落ちています。それ故にこの本丸を守護する結界も外界ではなく中の力が満ち満ちているがゆえに支えきれないくなっているのです」

「でもそれは結果として私の力が足りないからではないでしょうか」

「主はまだ人として幼い。人の世は我々長き時を存在できる刀から見れば短いものですが、それでも主はまだその中でもさらに若い。今はまだ焦る時ではありません」

「若いから、か。君たち刀に言われると何も言えないね。あなた方から見れば私の生きてきた時間などほんの瞬きにすぎないだろうから」

 ふわりと袂を横に払って、主はまっすぐに立ち上がった。

「結界のほころびを直したいんだ。この間本丸によからぬものが出たよね。悪い気配はすぐ消えたけど。あれは、君たちが退治してくれたのだろう?」

 黒味の強い双眸が石切丸の顔にすえられる。黙っていたことを非難するでもなく、ただ静かに事実を問う。

 彼に主が心配するからと言わないでおくれと頼まれてあえて報告はしなかったが、たぶんある程度気配が大きくな時点でこの審神者は気づいていた。

「気に病む必要はないですよ。よからぬものを払うのは御神刀である私の本来の役目。彼もまたその役目を当然のごとく受け入れてますから」

 そう、刀とは本来人を守るためにこの世に生み出されるのだ。

 主は視線をそらさずただ黙っている。何か心に湧き上がる想いを抑えつけているのだろう。

 幣を手にしたまま石切丸もまた立ち上がった。

「では行きましょうか。まず主は結界の術の復習から始めるとしましょう」

 

 

 本丸での主の指南役かな。霊力の使い方とか、祝詞とか教えてくれそう。

 よく一緒にお祈りをしています。

 術を教えてくれるのは別本丸の最古参の審神者。そのあたりも絡めて一度最初から話を作る予定。

 たぶんそれは二次創作じゃなくなりそうだけど。

 

 大太刀 石切丸 二〇一七年二月六日 練度最高値到達

 

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