ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

秘宝の里 ~順番~

「第一陣は前に伝えたとおり陸奥守が隊長で出陣する。それで次に出陣する順番だが該当する者達で話し合いを・・・」

 説明している山姥切の言葉を思いっきり遮って、大和守が威勢よく手を挙げた。

「はいはいはい! 僕行きたい!」

 立ち上がってアピールする彼を長谷部が睨み付ける。

「何を勝手なことを言っている大和守! こういうものは皆で話し合ってだな・・・」

「えー、そんなのめんどくさいよ。一番行きたいと思っている奴から順番に行けばいいでしょ。だから僕が一番!」

 胸を張って答える大和守を袂で口元を隠しながら宗三が流し目で冷ややかに見つめる。

「あなただけではないですよ。私も少々退屈していましたし、久々に戦場にでも行きたくなってきましたからね」

「宗三まで何を言い出す。ならば俺が先に行く!」

「おい、俺が一番最初だ! 最新の流行の刀の戦い方を見せてやるぜ!」

「流行っていつの話だよ、兼定。それ言ったら君は僕たち刀の中では最年少なんだから一番最後でいいだろ」

「てめっ、それ言うなっていつも言ってるだろうが!」

 大和守安定、へし切長谷部、宗三左文字、和泉守兼定。この四振りが今回新たに楽曲が追加された。だが彼らは自分が先に出ると主張するばかりで全く話にならない。

「あんたたちはまともに話し合いくらいできないのか」

 ぼそりとつぶやいた山姥切の言葉に大和守がかみつく。

「山姥切はいいよね。前の時は初期刀だからって一番最初に行かせてもらってたじゃないか。しかも曲だって最初だったし、ずるいや」

「あれは最初で状況がわからないから行ってくれって主が・・・」

 気まずげに布を下げて視線をそらすと、顔を隠しながらちらりと主の方を見やった。

 大和守はむうっと頬をふくらますと、しゃがみこんでにっこり微笑みながら主の手を取った。

「主さん、お願い。僕を先に行かせてよ。加州と一緒にちゃちゃと敵の首と楽器とってくるから、ね?」

「ちょっと、なんで俺を巻き込むの。お前と行くって言ってないじゃん」

 壁際で騒動から離れて爪を眺めていたはずの加州が慌てて止めに入る。だが大和守はつんと顔をそむけた。

「だって僕が隊長になるんでしょ。だったら部隊を誰にするかは僕が決めるはずだよ。だから加州は僕と一緒に行くの決定!」

「勝手に決めんなよ、安定!」

 騒ぎがさらに外へと広がって山姥切は頭を抱えた。もう誰もそれぞれで言い争ってこっちを見てもいない。

「どうすればいいんだ・・・」

 悩みこんでしまった初期刀を見つめていた主が何かひらめいたのかぽんと手を打った。

「そうですね、こういうときは・・・じゃんけんでどうでしょう」

「は?」

 目を見開いて思わず主を見返した。当の本人はというと満面の笑顔で部屋の中にいる刀たちを見渡す。皆、言葉を止めて主の方を見ていた。

「話し合いで決められなければ、じゃんけん勝負です。単純に勝ち抜いたものから順番に秘宝の里へ出陣する。それでどうですか?」

 じゃんけんに見立てたのかこぶしを軽く上げて主は笑った。

「なるほど、素晴らしい考えです、主」

 真っ先に主の提案に迎合したの長谷部だ。勢いよく立ち上がると、彼は手を振り払い、ほかの三振りを文句を言わせぬ目で見下ろした。

「勝負は一度きりだ。泣きごとは聞かん。わかったな!」

「いいぜ、そのほうが白黒はっきりするからな」

「まったく、面倒ですがしかたありませんね」

「よーし、負けないぞ!」

 彼らは円陣をくんで互いに鋭い視線をぶつけ合わせる。

「せーの、じゃんけん・・・ぽん!」

 

 

「やった、僕の勝ちだ―――!」

 こぶしを高々と掲げて大和守がガッツポーズをした。その隣では右手を抱えて膝をついた長谷部が震えている。

「くっ、俺としたことがあんな小手先のフェイントに引っ掛かるなんて」

 ひらひらと着物の袂を振りながら宗三はけだるげに首をかしげた。

「三番手ですか。まあいいでしょう。ゆっくりと支度でもしましょうかね」

 そして部屋の片隅で暗くなっているのは和泉守。

「くそぉ、なんで俺だけ負けるんだよ・・・」

 その背中を慰めるように堀川が優しく叩いている。

「うーん、たぶんそれは兼さんが出す順番をみんなわかっちゃったってたから。今度僕とじゃんけんの特訓すれば勝てるようになると思うよ」

 だいぶ言葉を選んで堀川が言ってはいるが、実際には必ず最初はチョキで、次がグーという順番で出しているのを本人が自覚していないのが敗因だ。

 勝負にかけるやる気だけは一番だったが。

「では次に行くのは大和守だな。誰を連れて行くか早急に決めろ。すぐに出陣することになるはずだ。・・・まずは加州は決定でいいんだな?」

「うん」

「だから安定、勝手に決めるなって。まんばもこいつの言うことばかり聞くなよ!」

「・・・その呼び方はやめろといつも言ってるだろう。わかった、加州は決定だ」

 不機嫌に目を座らせて山姥切は手にした筆ですらすらと部隊名簿に大和守と加州の名前を書き入れる。

「ちょっ、だから勝手にって・・・」

「わーい! がんばろうね、清光」

 

 

 むっちゃんの次はだれに行くかでじゃんけんで決めました。

 こうなると安定は強そう。そして兼さんは根が単純だからパターン化してても言われないと気付かないだろうなあ。

 ここでの一番の被害者はたぶん加州でしょう。うちの本丸でも安定に振り回されてます。

  

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