ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

秘宝の里 ~隊長 へし切長谷部~

 「我が隊は敵陣突破を最優先に編成を行う。ゆえにほかの奴らのように、情や好みによって人選をするなどもってのほかだ」

 早々に宣言した長谷部は机の上に今までの戦績を記した帳面を積み重ね、ずっと熟考している。

 机に向かったまま小一時間動こうとしない長谷部の後ろで、小夜左文字と厚藤四郎が姿勢正しく正座したまま並んで控えていた。

 くあっと大口を開けて厚があくびをする。

「・・・まだ決まんねえのか」

「うるさい、もう少し待っていろ」

 うっかり漏れた本音は当然長谷部に叱責される。地獄耳は相変わらずだなと思ったが今度は口には出さない。

 首をすくめた厚は隣にいる小夜の耳元でこっそり囁いた。

「そう言ってもさ、俺たちがすでに組み込まれている時点で黒田組を優先させているってバレバレなんだけど」

「長谷部さんは意地でも織田組は入れないと言っていましたから。それに短刀を入れるとなれば練度の高い僕たちが入るのは当たり前でしょう」

「別に俺じゃなくて薬研でもいいのにさ、何をこだわってんだか。博多はまあ無理か、練度が高くても刀装一つだけしか装備できなきゃあそこは厳しいもんな。・・・そういえば日本号は呼ばれてないみたいけど入れないつもりなのかな?」

 そう言いつつも長谷部がなんとなく日本号を避けている様子を思い出して、無理もないかと考えた。

「長谷部、日本号苦手だもんな。部隊で一緒になるのも避けるわけか」

「それは違うと思いますよ」

 さらっと否定した小夜は厚の耳元に口を寄せて囁いた。

「さっき、長谷部さんが山姥切さんに秘宝の里はどのくらいの練度が必要か聞いてました。六十くらいでは無理かって。それはたしか日本号さんの練度ではありませんでしたか」

「・・・素直じゃねえなあ」

 呆れてため息をついたとき、突然長谷部が立ち上がったので厚は聞かれたかと焦った。だが彼は帳面を凝視したままこちらを向こうとはしないので、大丈夫だったとほっと胸をなでおろす。

「敵を圧倒できる練度は必要だが、修練の必要なものも組み込まなくてはならないな。主は皆が強くなることをお望みだからな。だとすると・・・こいつだな」

 かるく帳面を叩いて立ち上がった長谷部はさっさと部屋を後にする。

 その後ろを慌てて小夜と厚が慌てて追った。

 

 

「え、何言うてはりますか。まさか長谷部はん、寝ぼけておまへんよな」

 自室で寝ころびながら、明石はだらけた姿のまま長谷部を見上げた。

「この俺が無駄なことをすると思うか。貴様は俺の部隊で出陣しろ」

 入口で仁王立ちになって侮蔑のまなざしで見下ろしている長谷部の額に青筋が浮かぶ。

そもそも寝ぼけているのは貴様の方だろう。なんだそのだらしのない恰好は! もうすでに昼近くだぞ。いつまでそんなにだらけているつもりだ!」

「そうはいいましても、非番ですやん。部屋でどうしようとも勝手ではおまへんか?」

「あれ、国行、なんでここにいるんだ? 畑当番じゃなかったのか? そういえば御手杵さんがアイスおごってもらうから当番変わったって言ってたけど、それ本当か?」

 タオルを首にかけて一仕事終えた愛染が不思議そうに部屋に入ってきた。後ろから蛍丸も一緒についてきたようだ。

 それを聞いた長谷部の雰囲気がさらに険悪なものへと変化する。

「ほう? それは聞いていないな。何の話だかくわしくきかせてもらうか!」

 乱暴に明石の胸倉をつかみあげるとそのまま自分の目線へと引っ張り上げた。

「長谷部はん、乱暴はあかんわ」

「貴様は一度その根性を叩き直さねばならないようだな」

 ぎりっと首を締め上げて、明石の顔色がだんだん蒼くなる。

「く、くるし・・・助けて・・・」

 顔を来派の二振りに向けるが、ともに冷めた目で見つめ返すだけだった。

「自業自得だろ。だから俺は内番はちゃんとやれって言ってんだ」

「そうだよ。サボったってどうせばれるんだから」

 愛染と蛍丸はかばいもせずにそろって苦言を口にする。これではどちらが保護者かわからない。

「それに長谷部さんの部隊には俺も行くんだよ。別に明石が行かなくてもいいけどさ」

 蛍丸のその言葉に、明石はくわっと目を見開いて逆に長谷部の胸倉につかみかかった。

「ほんまですか、長谷部はん!」

 その迫力に圧倒されて思わず頷くと、先ほどまでだらけきっていたはずの明石の目が燃えた。

「わかりましたわ、俄然やる気出ましたで。蛍と一緒に出陣できるんなら、どこへでも行きますわ!」

 その様子を見ていた愛染が目を細めて呆れたようにつぶやいた。

「単純だなあ、国行は。蛍がからむとほんとちょろすぎ」

「ま、これでやる気が出ればいいんじゃない?」

 

  なぜか明石が長谷部に連れていかれました。やる気はないけどやればできる子、それが明石。

 日本号は練度足りないので秘宝の里への出陣は無理でした。

 途中で厚から鶯丸に交代。短刀二振りは極でもちょっと厳しかったなあ。練度あげなきゃ。 

 しかし長谷部が一番楽器を見つける確率が良かった。あっという間にノルマをクリア。笛もいっぱいたまったけど・・・。

 主命の力はすごい。

 

 

近侍曲 へし切長谷部  二〇一七年二月九日獲得

 二〇一七年新春秘宝の里 第三陣

  隊長 へし切長谷部

     厚藤四郎  →  鶯丸

     小夜左文字

     明石国行

     蛍丸

     太郎太刀

出撃回数37回  笛8個  琴1個  三味線2個

 

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