ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

友情 ~第四会派~

 「さて、この会派は各々の修練を目的とするために集められたのだが」

 そう言って森鴎外は目の前の文豪たちを見渡した。

「目的に達するにはできるだけ潜書の回数を重ね、敵と交戦すべきなのだが、少し問題があってな」

「何があるのですか」

 常に姿勢を崩さずまっすぐな目で見つめてくるのは武者小路実篤。何事にも実直に己の意思を曲げぬ彼が一歩踏み出し森に問いただす。

「いや、実は私のところに君たちに関する手紙が届いていてな」

「手紙?」

「なんです、それは」

 萩原朔太郎島崎藤村が怪訝な声を上げた。

「まず、萩原君は友人の室生君から、島崎君は徳田君から、そして武者小路君は同派の志賀君から届いている」

 懐から三通の手紙を扇のように開いて三人に見せた。

「これらはすでに読ませていただいた。どの手紙もさすがに個性に満ちた素晴らしい内容となっている。まず室生君は金沢でも有名な詩人とされるだけあって、自然情緒に絡めた麗しい文体で萩原君のことをほめたたえている。優しい心根を持つゆえ人とうまく関わりができないかもしれないが、どうぞよろしく頼むと書かれている。ほかにも君に関するこまごまとした気を付けるべきことが記されているようだ。どうしてもだめなときはすぐに自分を呼ぶようにともあるな」

「・・・犀、ほめてくれるのはうれしいし、心配してくれるのはありがたいけど。でもそこまでする?」

 渡された手紙を握り締め、萩原は恥ずかしげにしゃがみこんだ。

「次は島崎君か。文体に華麗さはないが、彼らしい実直な文章だな。それゆえに君のことを心底心配しているのがよくわかる。普段はあまり行動に出ない分、文章では素直になれるのだな。実によい友人のようだ」

「秋声、やっぱりいい人だよね。地味だけど」

 自分のことを抱えた手紙を眺め、うつむいた顔は少しはにかんでいた。

「最後は志賀君から武者小路君宛か。君の誠実さと純粋さが洗練された文章で記されている。小説の神様といわれるだけあってさすがだな。あとは君の好物などが作り方つきで書いてあるようだが。これを与えればへそを曲げてて手も絶対に機嫌が直ると書いてある」

「志賀、余計なことまで書かなくていい!」

 こぶしを握り締め、武者は肩を震わした。

 三者三様の彼らの様子を見て森は口元に手を当てて苦笑した。

「いや、気にかけてくれる友人がいるということはありがたいと思ったほうがいい。失われた時に大事なものだったことに気づいてももう遅いからな」

 大事そうに手紙を抱えて眠そうなぼんやりとした目で島崎は森を見上げた。

「森先生はないんですか?」

「私か? それはない。だいたい今更互いに心配するような間柄でもないだろう」

 こんこんと扉が叩かれて、ひょっこりと新見南吉が顔を出した。大きなカバンを肩から下げている。どうやら今日の手紙の配達当番らしい。

「ご苦労様です。お手紙お届けに参りました」

 ひょこひょこと歩み寄ると、はいっとかわいらしく森に向けて手紙を差し出した。

「なに、私か?」

「渡しましたよ、では」

 狐の手袋をはめた手をひらひらとふりながら新見は次の届け先へと向かっていった。

「先生にも来ましたね、手紙。誰からですか?」

「む・・・子規からだな」

「ああ、正岡さんとは仲がよろしいと伺ってますが」

「一応互いに句を送りあう仲だが、実際はどうだか」

 ひらりと白い紙に包まれた手紙を開く。黒い墨で大きく堂々とした文字で記されたその言葉がまず目に飛び込んできた。

「べーすぼーるの誘い?」

 固まってしまった森の代わりに、横から島崎が読み上げる。

「きたる明日の正午、庭にてべーすぼーるをおこなう。ついては人数が足りないので、必ず森殿もくるように・・・だって」

「誘いっていうよりは先生が来るのがもう決定事項ですね、これは。あの方の野球好きは根性になっても変わらないようだ」

 幾分ひきつった顔で武者小路が手紙の文字を見つめている。迷いもなく一気に達筆で記された文字からは断られるかもしれないという考えが一切感じられない。

「だから言ったろう。心配などするような間柄ではないと」

 こめかみに手を当てながら、森はひくひくと眉を震わせている。

「でも・・・誘ってきたということは友達だからではないの?」

「そ、そうですよ。親しいからこそこうやって前置きなしで頼んできたのであって!」

「だけど、相手の都合などまるで考えてないよね」

「藤村!」

 萩原と武者がなんとか懸命に励まそうとしたのを、最後で藤村がぶち壊した。

「かまわん、正岡殿はいつもこうやってさりげない言葉でたくさんの人を巻き込んでいくのだ。もうなれている、気にするな」

 窓の外は晴天だった。おそらく明日もいい天気だろう。

 身体をほぐさねば肩を痛めるなと、森は軽く腕を回しながら考えた。

 

 

 どうもネタが思いつかなかった。

 ここでは何かあると手紙で伝え合う習慣があるようです。中にはえらく長い手紙を書く人もいるとか。

 文豪同士の関係性がはっきりしないから言葉づかいとかもむずかしい・・・。結構違うかもしれないけど、初期の四つの会派書きたかったから勢いで仕上げた。

 手紙の文章は書けませんでした。ごめんなさい。

 森鴎外は何となく引率の先生なイメージ。

 

 戦闘修練会派(文豪育成班)

   第四会派  森鴎外

         萩原朔太郎

         島崎藤村

         武者小路実篤

 

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