ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

記事 ~田山・島崎~

「何書いてんだ、藤村」

 図書館のサロンの片隅にあるテーブルで何やら書き物をしている島崎藤村の肩口を田山花袋は覗き込んだ。

 書き散らされてテーブルいっぱいに広げられた原稿用紙にはびっしりと文章で埋め尽くされていた。

「えー、なになに? 太宰君の今日の自殺未遂事件に、乱歩さんのいたずら大騒動、それから啄木君からの借金の取り立て方・・・おまえ、ゴシップ誌でも書く気かよ」

「だって仕方ないじゃないか。本当は僕、この図書館の潜書をもとにして小説を書くつもりだったんだよ。でもあの目ざとい司書さんに書きかけの原稿没収されてそれについて執筆禁止を受けたから。もうこんなことくらいしかネタがないよ」

 なかなか外には行けないしね、と島崎はあきらめ気味につぶやいた。

「国木田の奴もスクープとれねえってぼやいてたなあ。だからって身内ネタを暴露するのもどうかと思うぞ。だいたいどこでこれを発表する気だよ」

「僕だって彼らを実名で発表する気はないよ。個人情報とかなにかとうるさいからね。もちろん偽名にするよ。現代では気軽に個人出版物を販売できる即売会があるみたいだから、そっちにこれをもとにした話を出してみようかなと思っているんだ」

「・・・いや、きっとそれも司書に止められると思うぞ、たぶん。俺たちがここに転生してることも、図書館の本のことも一応極秘だろ?」

 それを聞いて島崎はぱたっとテーブルに突っ伏した。

「つまんないな。花袋は退屈じゃないの?」

「俺はまあ、美少女がここにいないことが最大の不満だな。そうだ、藤村。今度温泉に行こうぜ! ここにいないなら外でロマンスを求めればいいんだ!」

 こぶしを固めて右手を高く意気揚々と掲げた田山に、島崎は醒めた目でぽつりとつぶやいた。

「あ、花袋は混浴は禁止って司書さんが言ってたよ」

「な、なんだと!」

「それと温泉も山奥の湯治場限定だって。若い女の子に近づけさせたら危ないから、かならずほかの人たちと団体で行かないと許可しないっていってたよ」

「野郎ばっかりで行ってどうするんだよ。お近づきになるのに邪魔じゃねえかよ!」

「いいんじゃない、花袋は温泉だけ入れれば満足でしょ」

「よくない!」

 

 

 どうして今まで出なかったのに、一度出たらこれでもかって出てくるんでしょう、不思議ですね。

 ちなみにうちの司書さんは女性の設定ですが、容姿はいいのですが誰も逆らえない女傑設定なので、花袋さんが認める美少女認定されておりません。

 

 派閥なし 田山花袋  二〇一七年一月二十四日顕

 

                 = TOP =