ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

秘宝の里 ~隊長 鳴狐~

 

  縁側の廊下に音もなく一片の花びらが舞い落ちる。

 見上げれば本丸の屋根に覆いかぶさるように枝を広げた桜の花が風に吹かれてその盛りを過ぎ去ろうとする花を散らしていた。

 うららかな春の陽だまりの中で、いつもは肩に乗っている狐の眷属も廊下の上に丸くなってうたた寝をしている。

 目の前を花吹雪が舞い散ってゆく。

 時の流れの定かではない場所にあるこの本丸では四季の移ろいなど本来はないものだが、主の意向により時に合わせて季節を変えている。

 今は春、桜の盛りが過ぎようとする頃。

 刀が増えてにぎやかな本丸の人のあまり訪れぬ片隅で、鳴狐は過ぎ行く季節の名残を静かに眺めていた。

 庭に投げていた視線がふと横にそれる。軽く見上げたその人物は突然視線を向けられた驚きに目を見開いていた。

「驚かそうとしたら逆に驚かされたな。気づいてないと思ったぜ」

 にやりと笑って鶴丸は降参したとでもいうかのように肩をすくめた。

 足音は極力消そうとしていた。だが狐並みの聴力がある鳴狐ならばそのくらい聞き取れる。

 顔をやや傾げて何用かと視線を向ける。

 一瞬顔を真顔にした鶴丸は片手に持っていた皿に目をやって、すっとそれを鳴狐の方に差し出した。

「今日のおやつを配っているんだが、なかなか見つからないから探したぞ。鳴狐はいつもここに一人でいるのか?」

 すると隣で寝ていたはずのお供の狐が鼻をぴくぴくと動かしてから、くわっと欠伸をした。眠りから目覚めた狐は鶴丸の姿に気づくと目を大きく見開いて首をかしげた。

「おや、鶴丸殿でしたか。鳴狐になにかご用でしょうか」

「いや、俺は今日のおやつを配りに来ただけだ。今聞いたところだが、鳴狐はいつもこういうところで一人でいるのか? 粟田口の短刀たちと一緒にいるもんだと思ってたが」

「粟田口には一期一振殿がいらっしゃいますからな。これからは鳴狐めは彼らを陰ながらそっと見守りたいと申しておりますゆえ」

「・・・そういう考えもあるだろうが、向こうはどう思っているだろうな」

鶴丸殿?」

「なんでもないさ。部外者の俺がへたに口出しするものでもないからな。俺の用はこれを配りに来ただけだ。そっちの狐には光忠特製の油揚げももらってきたぞ、ほら」

「おお、これはありがとうございます!」

 ぱたぱたと尻尾を振って差し出された手製の油揚げにくぎ付けになっている。

 そして鶴丸は鳴狐の方に顔を向け直した。

「そら、一人一個だ。好きなのを取ってくれ」

 皿に積まれた饅頭は四つある。白い皮で丸いそれは手のひらに収まるほどの程よい大きさだった。

 鳴狐は大して悩まずに一番近くにあったそれを手に取った。

「今日のおやつは伊達で作った特製のやつだ。あとでぜひ感想を聞かせてくれ。あとさっき向こうの桜の木の根元の陰になったところで五虎退の虎が寝ていたんだ。さっきさから探しているはずだからそこにいると伝えてくれないか」 

「わかった」

 鳴狐が小さく頷いた。お供の狐も後を続ける。

鶴丸殿は忙しそうですな。何か用があるのですか」

「そうだ。俺はあと三人にこいつを配らなければいけなくてな。よろしく頼むぜ」

 鶴丸は身をひるがえしてさっさと廊下を去って行った。

 残された一振りと一匹の元にはおやつとして残された饅頭と油揚げがある。饅頭は手渡しだ。これを持って本丸中を探すのもすこし気がとめる。

「しかたありません。おやつをいただいてから五虎退殿を探すと致しましょう」

  鳴狐の意をくみ取った狐がそう言ったので、こくんと頷いた。むしろ自分のほうが目の前でおいしそうな匂いをさせている油揚げを食べたいだけなのかもしれなかったが。

 狐が食べ始めてから、鳴狐は片手に持っていた饅頭を口に近づけたがふと手を止めた。

「どうしました、鳴狐」

「いや、すこし匂いが・・・」

 小さな声でつぶやく。普通の饅頭にあるような甘い餡子ではなく、なにか違うにおいがする。だがいつもおやつは変わった趣向を凝らしてくるので今日もそのたぐいだろうと思い直す。

 面具をつけたまま口を開いてそれを食べた。軽く租借したところで鳴狐の動きが止まった。

「な、鳴狐!?」

 狐の叫びもむなしく体は崩れ落ちる。

「す・・・」

「なんですか!」

「すっぱい・・・」

 かろうじて絞り出した言葉に狐の眼が大きく見開かれる。

 その時向こうから軽快な足音が近づいてきた。

「虎さーん、どこ行ったのかな。・・・って、鳴狐さん、どうしましたか!?」

「これは五虎退殿、その饅頭を食べたとたんに倒れまして」

「ど、どうすれば。えっと、僕、すぐに誰か呼んできます。待っててください!」

 

 

「これを鶴丸殿が持ってきたのですか・・・」

 皿にのせられた食べかけの饅頭を見つめる一期一振の眼は静かなようで目の奥に剣呑な光が帯びていた。

 近くの部屋へ動かされた鳴狐の傍で、粟田口の長兄は正座をしたまま両の手を膝にのせて姿勢を正している。倒れこんでいたのはほんのわずかで、粟田口の者達がそこに呼ばれた時にはもう彼だけで何とか起き上がっていた。

「饅頭の中には酸味のあるものが詰められていたと」

 問いかける言葉に鳴狐が小さく頷く。

 一期の後ろで様子をうかがっていた鯰尾がひょっこり顔を出した。

「これが問題の饅頭ですか? 中身はちょっと見た目が変わってますけど食べれなさそうなものじゃないですね」

 無造作にひょいっと手を出した。

「ちょっと、鯰尾!」

「味見するだけですって、気になるじゃないですか。中身が何かわかればいいんでしょ。そんな大したものじゃないと思いますよ。いただきます・・・ぐむっ!」

 饅頭をかじった鯰尾の顔が急変する。慌てて口元を抑え、饅頭がぽとりと床に落ちた。

「大丈夫ですか、鯰尾。だから勝手なことをしてはならないと」

「い、いち兄。これめっちゃ酸っぱい。・・・う、梅干しみたいだけど・・・それよりもっと酸っぱい」

「梅・・・?」

 確かにかすかににおうこの香りは梅の香りに近いがもっと濃密で梅干しのそれとは違う気がする。隣でかがみこんでいた薬研が落ちた饅頭を嗅いだり眺めたりしながら観察していた。

 短刀の弟たちが慌てて水を鯰尾に差し出す。急いで水を飲み下す彼を横目に見て一期は剣呑に目を細めた。

「叔父上」

 静かに呼びかけて一期が立ち上がった。穏やかな笑顔は先ほどから一寸たりとも崩れない。だがその眼は色濃く光を宿していた。

「これより主のところへ事の次第を報告をいたしましょう。私もともに参ります」

 

 

「鳴狐に一期ですか。あなた方が一緒に来るとは珍しいですね。どうかしましたか?」

 審神者の部屋で書類を確認していた主がこちらを振り返りながら優しげに微笑んだ。

 穏やかな性格の彼らの主たる審神者はつねに付喪神である刀たちに笑顔を惜しまない。今日も湧きに積み上げられた書類の束を見れば仕事に追われていることは目に見えていた。

 あとで手伝わねばと一期は心の片隅で思いながら、先に用件を澄まそうと表情を改めた。

鶴丸国永殿の件でお話に上がりました。主、何かお心当たりはございませんでしょうか」

 鶴丸の名を聞いた瞬間、主の眼がかすかに宙を泳ぎ、隣にいた初期刀に窺うような視線を投げたのを見逃さなかった。

 その傍らの山姥切といえば、いつもは表情の乏しい彼らしくもなく明らかに顔をこわばらせていた。事実、嘘をつくのは苦手な刀だ。どうやら心当たりがあるらしい。

鶴丸がなにかしたのか」

 問い返してきたその言葉もどこかうろたえて力がない。

 主を問い詰めるのではなく、一期は彼の方に矛先を定めた。

「実は我が粟田口の鳴狐殿が鶴丸殿から頂いた饅頭でひどい目にあいましてな。饅頭の中にはどうやら悶絶するほどの酸味のあるものが仕込まれていた様子。いかにいたずら好きの鶴丸殿とて今回の件はとうてい見過ごせるものではありませぬ」

「饅頭? なんでそんなものを鶴丸が配っていたのでしょうか」

 主が不思議そうにぽつりとつぶやいた時、威勢のいい声とともに入口の襖がひらかれた。太鼓鐘貞宗と燭台切光忠が饅頭の山を持って審神者の部屋に入ってきた。

「今日のおやつ持ってきたぜ! 俺とみっちゃんの手作りなんだ・・・あれ、なんかみんな集まってるけど何があったんだ?」

「一期さんどうしたんだい。粟田口の方にはあとで持っていくつもりだけど」

 だが部屋にいた面々は彼らが持っている饅頭の山を凝視していた。

「饅頭、それに違いありません。燭台切殿、その中身は何でしょうか」

 険しい形相で立ち上がった一期に、話の流れなど全く知らない燭台切はうろたえるしかなかった。

「何ってこれの中身はみんなふつうのこし餡だよ。本当はずんだ餡にしたかったんだけど、この前におやつで続けすぎて怒られたからね」

「餡子? 本当に?」

「本当だってほら見てみるか?」

 無造作に太鼓鐘がその中の一つを手に取って二つに割った。確かに中身は黒くて艶のある小豆あんが詰まっていた。その中身に目を見開いた一期はすぐさま顔をしかめて低い声でつぶやいた。

「ならば鶴丸殿がもってきたという饅頭はいったい・・・」

「え、鶴さんがどうしたの?」

 事情を分かっていない二人に手短に説明する。すると太鼓鐘が心当たりがあったのか、ぽんと手のひらにこぶしを打った。

「そういえば饅頭作ってた時にみっちゃんは誰かに呼ばれて少し台所いなかっただろ。その時、鶴さん来てたぜ。面白そうだなって言われて一緒にいくつか饅頭作ったけど、そういやなんかいろんなもの詰め込んでたような」

「ちょっと、貞ちゃん。その時どうして鶴さんを止めなかったのかな」

「え、俺なんかまずかったか?」

 まったく状況をわかっていない太鼓鐘に、周りの刀たちは深いため息をつく。

「そういうことでしたか。残る問題は鶴丸殿が何を饅頭に入れたかですね」

 額を抑えて一期は眉をしかめた。それを聞いて何か思い出したのか、太鼓鐘がごそごそと懐から何かを取り出した。

「鶴さんからこれ預かってるぜ。主に渡してくれって」

 手渡された一枚の紙を主は受け取った。紙片には黒い墨で流麗な字が連なっていた。

 主はゆっくりとそこに書かれている文を読み上げた。

「壱番目 金色の丸くて光る幸運

 弐番目 食べて驚きの黒い何か

 参番目 薬はにがいほど良し

 肆番目 地獄が覗ける赤い塊 ・・・何でしょうね、これは」

「これだけでは意味が分からないぞ」

 横でその紙の内容を見ていた山姥切も困った顔をしている。

「おーい、いち兄。さっきの饅頭の中身わかったぜ」

 白衣を着た薬研が颯爽と審神者の部屋に入ってきた。一期の傍に来る手前で、これはうまそうだなと燭台切の持っていた饅頭を一つ手に取った。

「見たことがあると思ってな、ちょっと部屋で調べてみたんだ。味も確かめてみたが、たぶんこれだと思うぜ」

 薬研は白衣から取り出した小さな瓶を皆の前に掲げて見せた。

「これは梅エキスっていってな。梅の実をどろどろになるまで煮詰めて濃縮したこの国伝来の健康食品だ。ただ思いっきり煮詰めているからその酸っぱさは梅干しなんか敵わねえくらい半端ないからな。こんなもの原液のまま食ったらそりゃ悶絶するだろう」

「このようなものを鶴丸殿はなぜ・・・」

 一期は瓶を手にして肩を震わせた。

 「主、いるかーーーっ!!」

 突如響き渡った怒声に、驚いて皆が耳をふさいだ。部屋の入口には今度は憤怒で顔を赤くした同田貫が立っていた。

 耳を抑えていた手を恐る恐る外して、主は困惑した表情で答えた。

「え、ええ。同田貫、どうしましたか?」

「どうもこうもねえ。鶴丸の野郎はどこだ。とんでもねえもん食わせやがって! 普通の饅頭だと思ったらえれえのが入ってやがった!」

「饅頭・・・ですか」

 主は言葉をなくして手元の紙に考え込むようにそれを見つめている。

 怒り狂う同田貫の傍にいつの間にか寄っていた薬研が彼の顔に近づいてそのにおいをかいだ。

「な、なんだよ」

「このにおい・・・生薬だな。おそらくせんぶりのようだが、もしかして旦那、そのまま食べたのか?」

「ああ? 中身がなんだか知らねえよ。ただ食ったらすげえ苦かったぜ」

「生薬、苦い・・・つまり主、こいつは」

「はい、どうやら鶴丸さんの書置きの参番目の項目に当てはまりますね。『薬はにがいほど良し』」 

「だとすると鳴狐殿はこの弐番目の『食べて驚きの黒い何か』ということになるのでしょうか」

 皆からの視線を集めた主は何かを悟ったような目で見つめ返した。

「おそらく鶴丸さんは 食べた者の饅頭の中身で順番を決めようとしたのでしょう。さしずめ饅頭はくじがわりということですね」

 困った様子で主は傍らの山姥切を見上げた。

「ああ、おそらく。現在の犠牲者は鳴狐と同田貫だ。この両名は次の秘宝の里出陣での部隊長に任命する予定だった。その件で俺は主とその出陣順について話し合っていたのだが、鶴丸に聞かれてしまい、あいつは俺に任せろと言って逃げてしまったんだ。やはりあの時捕まえていれば・・・」

「あと来ていないのは長曽祢と大倶利伽羅ですね。この分では残りの中身に何を入れていることやら・・・」

 主と山姥切は目を見合わせると、顔をうなだらせて瞠目した。

「申し訳ありませんが饅頭の件はひとまずこちらで預からせていただけないでしょうか。今は秘宝の里の出陣が迫っているので、そちらの方を・・・」

「主、今の話はいったいどういうことだい?」

 腹の底から響く冷ややかな声音に、主はびくっと肩を震わせて後ろを振り返った。急須と湯呑の乗った盆を両手に持ったまま、怖い笑顔を浮かべている。

「歌仙、いつからそこに?」

同田貫が大声で怒鳴りこんだ時からかな。主の部屋で皆が騒いでいるから何かと思えば、どうやら食べもので遊んだたわけ者がいるようだね」

 手にしていた大きな急須を音を立てて手近の卓袱台に置くと、指を重ね合わせて軽く音を鳴らした。

「まったく、あれほど食べもので遊んではいけないと言っているのに、平安生まれの太刀が率先してやってくれるとはね。皆の見本にならないからきつく仕置きをしないといけないな」

 平静を装っているが背中からこぼれ出る黒い何かに部屋にいた者達は恐れおののいて歌仙を止められるものがいない。食べものを粗末にするとこの本丸で彼の怒りが一番怖いのは周知の事実。

 誰も微動だにしない中で、一期がすっと立ち上がった。

「歌仙殿、よろしければお手伝いいたしましょう」

「それは助かるよ。僕と君の力があればさすがの彼でも逃げられはしないだろう」

 軽く口元で笑い合った歌仙と一期は礼儀正しく主にいとまを告げる。

「では主、必ずや捕まえてまいります」

「いいかい、主。くれぐれも好奇心で変なものは食べないでくれよ」

 部屋を出て行った彼らを主は茫然と見送った。そんな主の耳元に山姥切がこっそり耳打ちする。

「いいのか、あいつらを行かせて」

「あんなに怒っている彼らをあなたは止められますか?」

「・・・無理だな。聞いた俺が悪かった」

 こほんと喉を鳴らして主が鳴狐と同田貫に向き直った。目を細めた主の表情から感情が消える。

「鳴狐、同田貫両名に改めて私から主命を。次の秘宝の里に部隊長として出陣してください。鳴狐は第二陣、同田貫は第三陣で。わかりましたか?」

「わかった」

「おい、それじゃあ鶴丸の仕掛けた順番通りじゃねえかよ。いいのかよ」

 不平を漏らす同田貫に主は静かな視線を投げかけた。

「私が決めたことです。他に理由はありますか?」

「あんたがそうだと決めたならいいけどよ。まあいい、隊員は隊長が好きに決めていいって決まりだったよな。今回もそうだろ」

「はい、大太刀二振りと残り三振りは自由に決めてください」

「わかった。なら大太刀の奴らもこっちで決めさせてもらうぜ」

 気合を入れて指を鳴らしながら同田貫が主の部屋から出ていく。部屋に残ったのは主の傍に控える山姥切と面して座ったままの鳴狐と薬研だけだった。

 ふっと口角を上にあげて笑うと薬研はおかしげに口を開いた。

「まったく、鶴丸の旦那もとんでもないことをしてくれるぜ。ただ今までのいたずらよりも今回は度が過ぎてねえか」

「ああ、どうもあいつらしくない。普段ならその場は怒ってもすぐに笑い飛ばせるような軽いものを仕掛けてきていたが、この件は冗談ですむようなものではない」

 山姥切が懸念するように現実に歌仙と一期が怒りに身を任せたまま鶴丸を探している。自分が仕掛けたことがどのような事態になるか予想できない彼ではないはずなのに。

「彼には彼の考えがあると思う」

 ぽつりと鳴狐がつぶやいた。珍しく自分の意見をはっきりと言った彼に、誰もが驚きの顔を見せた。

「その考えに思い当たる何かはあるのですか」

 主の問いかけに鳴狐はしばし首をかしげ、小さく首を振る。

「それはわからない、ということですね。でも鳴狐は彼からなにか感じ取れるものがあったということですか?」

 今度ははっきりと頷いた。

「鳴狐・・・」

 何やら心配の声を上げるお供の狐の毛並を安心させるように撫でた。そのまま傍らにいたままの薬研のほうを見やる。彼は突然見つめられて驚いたようだが、すぐにこちらに笑い返してきた。

 薬研がまだそばにいるのも、一期が彼に似合わぬ怒りを発しているのも、そして倒れている鳴狐をみつけてうろたえた五虎退も、その根底にある想いは一つなのかもしれない。

 粟田口というつながりを持った刀、として。

 主は穏やかに笑みを浮かべたが、傍らの山姥切は表情を強張らせたまま硬い声で言った。

「鳴狐はあいつの行動に納得しているようだが、このままで済むとは思わないぞ。この肆番目に関してはどうも嫌な予感しかしない」

 地獄を見るとはいったい何なのか。現状から考えうるに穏便に終わるような代物ではないはずだ。

「俺っちもそう思うぜ。残りは長曽祢の旦那と大倶利伽羅か。どっちにあたっても血を見そうだな」

「切国も薬研も怖いことを言わないでください。そんな恐ろしいことがおこるわけは・・・」

 主の言葉を遮るように、遠くから誰かの怒鳴り声が鳴り響いた。あの声は和泉守か。

 そちらの方に目を向けた山姥切が冷ややかな声音でつぶやいた。

「そらみろ。もう騒ぎが起きたようだ」

「できれば話が通じてくれればいいのですが。とにかく行きましょう」

 

 

 出陣していないけど秘宝の里の話です。出陣前夜?

 まだ続きます。次は肆番目。

 

近侍曲 鳴狐 二〇一七年四月十七日 取得

 

二〇一七年秘宝の里卯月 第二陣

 隊長 鳴狐

    大包平

    五虎退

    厚藤四郎

    石切丸

    蛍丸

 

ボス到達回数 55回 笛7個 琴5個 三味線3個

 

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