ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

大阪城 ~弟探索~②

 本丸にしつらえられた転送装置の前で大阪城に出陣する刀たちが集められていた。

 朱色に塗られた鳥居の向こうは時空をゆがめられているせいか、間からのぞく空間が歪に揺らめいていた。当本丸ではこの鳥居を潜って時空を渡った刀たちは様々な時代の流れの中で歴史改変を狙う者たちとの戦いに臨む。

 鳥居の前にはこれより出陣する部隊の面々と、その見送りの者達が数名集まっていた。

 昨日また体調を崩した主はこの場に臨席していない。代わりに初期刀として山姥切が注意事項を申し渡した。

「注意事項は以上だ。ほかに何か聞きたいことは・・・」

「山姥切殿、少しよろしいでしょうか」

 丁寧な口調で一期一振が前に進み出た。

「なんだ」

「今回の大阪城探索でぜひとも使用したいものがあるのですが」

 そういって差し出されたのは主から借り受けたタブレットというものだ。

 この板のようなものを操作すると様々な情報が引き出せる。ここに顕現した刀たちも一通りその利用法と使い方を教えてもらっていた。

 だが一期が昨日主の元から退出するときに借りているのは見ていたが何に使うつもりであったかは知らなかった。

 その画面を山姥切は覗き込む。

 差し出されたその画面に映っていたのは巨大な鉄球がついた巨大な機械。予想もしなかった物体を見て思わず固まる山姥切をよそに、一期は優雅な口調で説明を始めた。

「せっかく主から命を受けたゆえ時間をかけては申し訳ないと思いまして、この機械で大阪城ごと壊してしまえば探索も容易かと。地下に行くにはこのどりるとやらがついた機械などいかがでしょうか」

 激しいめまいが襲ってきたが、倒れそうになったのを何とか踏みとどまった。

「・・・いや、こんなものを使ったら大阪城ごと後藤がつぶれてしまうだろ」

 ぽん、と手を打って一期は申し訳なさそうに苦笑した。

「ああ、そうでした。私としたことが焦るあまり見境をなくしていたようですな。しかたありません、こうなったら正攻法で行くしかありませぬ」

 この様子だと本当にそこまで思い至らなかったのだろう。確かに彼らがいるのは地下だから上から取り壊せばたどり着けるかもしれないが、がれきなどでつぶされる危険は排除できない。

 ほっとしたのもつかの間、一期はこぶしを握り締めあらぬ方向へ向けて宣言した。

「この一期一振、粟田口の長兄として、後藤を探し出すまで決して本丸には戻りませぬ。主にもそのようにお伝えください、山姥切殿」

 そう言い残して颯爽と鳥居へと向かっていく一期には何も言うべき言葉は見つからなかった。ああなった彼はもう誰の話も聞かない。

 山姥切はそこにいた出陣部隊に入っている粟田口の兄弟に声をかけた。

「厚、いざとなったら一期を止めてくれ。あのままだと自分が重傷になっても先に進むといいかねない」

 だが短髪黒髪の短刀は腕を組んで難しい顔をした。頭にかぶった飾りの見事な兜がわずかに傾く。

「でもよ、俺、極になったけどさすがにあの練度でやる気に満ちたいち兄止められる気がしないぜ。なんせ太刀と短刀じゃ力の差がありすぎるしな」

「俺もまだ練度が低いからいち兄止められないと思う」

 厚と信濃にすぐさま無理と言われた。向こうでは博多が目を輝かせて叫んでいる。

「さあ、小判稼ぎにいくとー。いち兄、急いで大阪城を攻略しに行くばい!」

「ええ、行きましょう。後藤もきっと暗い地下で独りさびしがっているはずです」

 すでに博多は小判に目がくらんでこっちの頼みなんか聞いてくれるはずもない。

 暴走しそうな彼らの様子に、山姥切は目の前が急に揺らめいたのを感じた。頭に手を当てて暗い顔のままうつむいてつぶやく。

「だから写しの俺がこんな役目勤まらないと何度言えば分ってくれるんだあの主は。名剣名刀ぞろいのこの本丸で出陣部隊の総隊長だなんて役職は俺になんかふさわしくないんだ。ほかにもっとうまくできるやつがいるだろ」

「だけどさ、大将からずっと任されているってことはそれだけ信頼されてるってことだろ。あんたはいつだって自分に与えられた役目をちゃんとこなしてるじゃないか。オレは最初っから見てるからわかってるぜ」

 にっかりと満面の笑みで厚は山姥切の方を励ますように叩いた。初めての鍛刀で顕現した厚はまだこの本丸の体制が整わなかったころから陰ながらに補佐してくれていた。

「ただなー、できたら薬研のやつがいてくれた方がよかったんだけどな。あいつのほうがうまいこといち兄を説得できそうだし」

「わりぃな、俺っちはこれから極修行だ。しばらく帰ってこないから、その間いち兄のことよろしく頼むぜ」

 噂をすれば旅装束をまとった薬研がふらりと現れた。笠をかぶり旅支度に身を包んだ彼は片手をあげて笑う。

「まじかよ」

「帰ってきたら大阪城へ行くことになるだろうしな。それまで頑張れよ」

 

 

 弟のためならいち兄は重機まで持ち出してきそう。

 大阪城の100階をどれだけ周回したことか。二週間近くかかってやっと出てきてくれました。いち兄のプレッシャーが半端なかった。

 これで藤四郎の兄弟は全員そろいました。また新しい弟でるのかな?

 ちなみに博多は大阪城攻略だけでレベルカンストしてます。はっきりいってめっさ強い。早く極にしたいんだけど・・・。

 ちなみに第一部隊隊長を外れてますが、山姥切は近侍の仕事(雑用)は続けさせられている模様。

 

第8回大阪城探索部隊(後藤捜索班)

  第一部隊 隊長 信濃藤四郎

          厚藤四郎

          一期一振

          博多藤四郎

          蛍丸

          歌仙兼定

 

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