ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

写しの刀 ~後日談~

  帰ってくるなり戦塵まみれた戦装束を解きもせず、一目散に審神者の部屋へ突撃してきた山姥切はあきらかに怒っていた。

 乱暴に廊下から障子を引きあけると、何事かとびっくりしている主の顔面に膝をついて身を乗り出した。

「・・・あんたは全部知ってて俺を第四部隊と行かせたな」

「ソハヤとのこと? このあいだ政府から新規の通達があったからね。君とソハヤをともに出陣させれば何かが起こるって」

 それに、と主は茶を一口すすってにっこりと笑いかけた。

「先に知らせていたら、切国、絶対ごねたでしょう?」

 図星を指されてぐっと言葉を詰まらせた。

「でもちゃんとお話しできたみたいでよかった。君がソハヤのこと避けているって長谷部が言っていたからちょっと心配にだったんだ」

「避けてはいない。たまたま出会わなかっただけで。いや、そんなことで心配なんかするな」

「それなら自分から彼に話しかける勇気はあった?」

「・・・」

 親しくなれば君が築いた壁すらあっさり取り払うくせに、初対面の刀には慣れるまで相当時間がかかるのは今までの経験上わかりきっていた。その上、写しなんだと堂々と言えるソハヤノツルキに、写しの負い目を抱き続ける山姥切が自ら近づけるはずはない。

 ちょうどいい機会だからと、回想というものを利用させてもらった。

 この本丸を預かる主としてはどの刀もみな仲良くしてほしかったから。

「切国もこれでソハヤと普通に話せるようになったでしょう?」

「・・・同じ写しの刀だからってあんな立派な霊刀が俺の相手なんてするはずが」

「おーい! 山姥切、ここにいたか!」

 縁側の入り口からスパーンと勢いよく障子をあけ放ってソハヤが笑いながらそこに立っていた。

「な・・・」

 振り向いて絶句する山姥切のことなどお構いなしに、ソハヤは嬉々として要件を一方的に告げた。

「刀装が壊れたから新しいのをくれと長谷部に言ったら、お前が自分で作れと怒られてな。あんたなら作り方知ってるんだろ? 教えてくれよ」

「なんで俺なんだ。俺なんかより、今日の近侍に聞けばいいだろう」

「その近侍は第一部隊で連隊戦に出撃中だからいないぞ」

「あ・・・」

 そうだったと言葉をなくした山姥切に後ろから主が追い打ちをかける。

「連隊戦は本日あと六周するはずですから、本日の近侍を務めてくれる平野は夕方すぎでないと帰ってきませんね」

「だから早くしてくれよ。場合によっては俺たちまた長篠に行かなきゃなんねえからな」

 急き立てられるように腕を引っ張られて山姥切は無理やり立たされた。ソハヤは練度は低くても太刀だから力では敵わない。

 ずるずると引きずられるようにして山姥切はソハヤに刀装を作る部屋へ連れて行かれてしまった。

 口元に指を当てて主はにこやかに笑う。独り言をつぶやくその口調はどこまでも楽しげで嬉しさを隠せずにいる。

「ほら、仲良くなれたじゃないですか。切国には多少強引な相手の方がいいみたいですね」

 

 

 ソハヤが山姥切を連れまわしてくれるといいな。

 陽気で気遣いできそうなめずらしい太刀なので、予想しないことで落ち込みやすい山姥切といい関係できるんじゃないかなと思ってます。太刀って周りを見ていないのか、独特の世界観を持ってるの多いからな。

 今ソハヤがうちの本丸で一番の新入りです。その後、この様子をどこかで見ていた長谷部がカンストで現在空いている山姥切がなつかれているみたいでちょうどいいからと強引にソハヤの世話を全部押し付けました。

 基本面倒なのはすべて山姥切に押し付ける長谷部だったり。お前がやればいいだろうの言葉には、俺は主のそばにいなくてはならないのだ、で反論されて結局押し切られそう。

 

                = TOP =