伊達者 ~太鼓鐘・燭台切~
食卓の上に置かれたずんだ餅をまったく手を付けないで、太鼓鐘貞宗は眉を寄せながらじっと見つめていた。
「どうしたの貞ちゃん、ずんだ餅食べないの。もしかして実は嫌いだったとか・・・」
おやつを配り終えた燭台切がいまだ食べようとしない太鼓鐘に慌てて声をかけた。好物ではないものを今まで押しつけていたのかと想定外の事態に思い至ったようで、顔が一気に青ざめている。
これは誤解しているなと素早く感じ取った太鼓鐘はにかっと笑って首を振った。
「違うって。ずんだ餅は大好きだよ。じゃなくて、なんかなー、盛り付けがおしゃれじゃないっていうか、やぼったいっていうか」
むぅぅとうなりながら、フォークでつきたて餅のぷにぷにした食感をいじっている。
「そうだよ、ずんだ餅ってただ丸めた餅を皿に乗っけてずんだ餡をかけただけだろ! こんなかざりっけないのを喜んでいるから、伊達はやはり東北の田舎者だとか言われてんじゃねえのか!?」
こぶしにフォークを握り締めて立ち上がった太鼓鐘が力説する。
「いやー、それはちがうんじゃねえのか」
隣で見てた鶴丸がからかいをこめてつぶやく。餅は餅だろと言いながら、大口を開けてずんだを口にする。だが燭台切はそれを本気でとらえたようだ。
「・・・たしかに、貞ちゃんの言う通りかもしれない」
うっかり口にした茶を鶴丸は吹き出しかけた。
「おい、光坊、何をまじめに受け取ってんだ。加羅坊も何とか言ってやれ」
「俺にかかわるな」
鶴丸の助けを一刀両断して、われ関せずと黙々とじぶんの餅を食べている。
顎に手を当てながら太鼓鐘はまだ真剣に考え込んでいるようだ。
「ずんだ餅は味はいいんだよな。こんなうまい餅はほかにねえぜ。だからもっと伊達らしく派手にきらきらしく、最新の流行を取り入れるべきなんだ」
「そうか。さすが貞ちゃん。ずんだ餅に足りなかったのは伊達らしさなんだね!」
「だからおまえら、正気か?」
あきれ顔の鶴丸のつっこみを全く気にすることなく、彼らは伊達らしいずんだ餅について激しく意見を交わし合う。
「だがいくら俺たちがこうだと思っても受け入れられなければ、それは世の中では認められねえよな」
「わかった。毎日新生ずんだ餅をおやつに出してみんなの意見を聞いてみるよ!」
「ちょっと待て! 毎日か?!」
鶴丸が止めるのも聞かず、燭台切はまぶしい笑顔を浮かべて太鼓鐘の手を取った。
「やっぱり貞ちゃんは最高だね。さすが伊達の刀だ」
「俺のこの感性を理解してくれるのはみっちゃんしかいないぜ!」
がっしりと手を取り合って絆を確かめ合う。
もう自分だけではどうにも止められないと悟った鶴丸はおかわりのずんだ餅に手を伸ばしている大倶利伽羅に尋ねた。
「お前は止めなくていいのか。このままだとおやつが毎日ずんだ餅攻めになるぜ」
「別に食べれて旨ければ何でもいい」
その後、一週間続いた変わり種ずんだ餅のおやつ攻めは、短刀の弟たちに泣きつかれた各刀派の兄たちの怒りの苦情によってやっと終焉を迎えたのであった。
たくさん枝豆を育てて待っていたみっちゃん待たせました。夏の実装からずーっとこなかったから。
キャンペーン終了間際でぎりぎりおじいちゃんたちが連れてきてくれました。
貞ちゃんは服装だけじゃなくてなんでもおしゃれにこだわりそう。
そしてうちの本丸のみっちゃんはずっと来ないせいできっと貞ちゃんには甘いと思う。
そしてこのずんだ餅攻めは黒幕は鶴丸だという濡れ衣が発生するのであった。たぶん日ごろの行いのせいだと思う。
短刀 太鼓鐘貞宗 二〇一七年一月十七日顕現
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