ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

想起 =刀と主と=

遥か昔の時代の戦場へ行くことのできる本丸の鳥居の前で、主のまだ少年特有の高い声が初めはか細くあったのが次第に力強く響いていく。これから新たな任務へ出陣する部隊を前に指令を申し渡していた。 「この度の任務は政府が作成した疑似戦場の仮想空間にお…

喫茶店 ~堀・織田・永井~

「カフェいうのはこないなおしゃれなところやったんやなあ。お客はんもどことのう気取ってるっていうか、いかにも文化人とかいいそうなやつらばっかや」 店の片隅にある席についた織田作之助はきょろきょろと遠慮なく店の中を見渡しながら、装飾やテーブルに…

秘宝の里 ~隊長 鶯丸~

「これから出陣でしょうか、鶯丸様」 支度を済ませ自室を出ようとしたところで声をかけられた。 眼下で耳のあたりで切りそろえた茶色の髪が動きにつれて揺れる。粟田口が一振り、平野藤四郎がめずらしく戦装束に身を包んだ鶯丸の姿を目にしたためか、丸くし…

秘宝の里 ~隊長 一期一振~

「今回私たちの出陣が遅れたことについて燭台切殿から直接謝罪の言葉をいただきました。ですから彼を責めてはいけませんよ」 一期一振は弟たちを前にして神妙に告げた。彼らもまた尊敬する長兄の言葉を真面目に聞いている。 その中で前列に足を崩して座って…

夕暮れ ~来派~

太古より重く静謐な空気に守られていたはずの聖域が揺れた。 神社の閉ざされた沈黙を破る不穏な気配を感じて、己の本体のかたわらでいつ目を覚ますともなく微睡んでいた蛍丸は夢の淵より舞い戻った。いまだ夢を漂ううつろな目をこすりながら、穏やかなこの地…

秘宝の里 ~隊長 小狐丸~

「おー、すげえな五虎退。懐入り込んで一撃か。機動速くなけりゃ出来ねえ技だよな」 敵に止めを突き刺した太刀を引き抜いて獅子王は感嘆の声を上げた。 襲ってきた槍の部隊はすべて地に倒れ伏せさせた。この程度の強さならば高速で攻撃を仕掛けてくる槍とて…

野宴 ~次郎太刀~

「酒はのめのめ~、飲まれるなぁ~っと」 なみなみと酒を注いだ黒塗りの升を手に太郎太刀は上機嫌で声を張り上げた。張りのある歌声が広々とした野に響き渡る。緑の草が萌えはじめた春の野は穏やかな日の光があたりに優しく降りそそぐ。暑くもなく、寒くもな…