ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

不安 ~堀川・和泉守~

「国広、お前あいつにだけちょっと違う態度とるよな。なんかよそよそしいっつうか、態度が明らかに冷たいよな」 外で洗濯を干していると、シーツを手渡されながら兼さんに突然そう言われた。堀川はシーツを竿に広げながら何気なく聞き返した。 「誰の事?」 …

道場 ~燭台切vs歌仙~

「加州君、大和守君、ちょっとここを貸してもらってもいいかい?」 汗をぬぐいながら加州は入り口に目を向けた。そこには内番服でもさりげなく格好良さを見せる燭台切がさわやかな笑顔を浮かべて手を軽く上げていた。 その隣には袂を紅白のひもでたすき掛け…

装い ~乱・加州~

「主さーん、乱藤四郎、ただいま帰還しました!」 入口のところでくるりと軽やかに一回転をして、乱はウインクをした。前よりも短くさらにフリルのついた戦装束がふわりと浮きあがる。 先日刀たちより贈られた綿入りの暖かな半纏をまといながら、主はにこに…

道場 ~長谷部vs山姥切~

「あーあ、清光とばっかり打ち込みしてるの飽きちゃった」 道場にごろんと転がった大和守安定は、綺麗に磨き上げられた板の間に手足を投げ出して大きく伸びをした。そのまま寝たふりをして怠けだした彼のもとに、肩に木刀を軽く打ちつけながら、本日の相手の…

連隊戦 ~監視~

画面の向こうでは第一部隊が無事に最後の敵を切り倒した光景が映し出されていた。 高速槍が襲ってくるこの局面ではいかに頑丈な刀装を装備してもそれをすり抜けて、直接本体へ仕掛けてくる攻撃をしのげるかにかかっていた。彼らが受けたのは一撃くらいで、そ…

再会 ~平野・前田~

僕が先に修行に旅立つことになった時、前田は僕の手を取って何かを想いをこらえた顔で声を抑えながら言った。 「主のために強くなってきて帰って来てくださいね」 口にした言葉は主のために。決して自分のことは言わない。それが前田だ。 同じ粟田口の兄弟た…

主と刀と ~加州清光~

「あるじー、ちょっといいかな」 廊下から襖を開けて現れたのは加州清光だった。 「いいよ。どうしたの?」 座布団に座ってお茶を飲んでいた主はこころよく加州を部屋に呼び入れた。嬉しそうな顔をして彼は主の前に座った。 「明日、審神者の集まりに行くん…

聖夜 ~贈り物~

「で、みんな集めて何の話だ?」 片膝を立てて豪快に座る薬研が粟田口の部屋に集まる短刀たちを見回して尋ねた。大きく欠伸した彼はまた昨夜の織田の集まりに遅くまで参加していたらしい。 いまだ残る酒に眠そうな目をこすりながら、真っ先に勢いよく手を上…

焚火 ~物吉・鯰尾~

「あ、浦島さん。そんなに急いでどちらへ」 脇差の部屋へ行こうとしたところでばったり廊下で出くわした物吉は、あわててどこかへ行こうとしている彼にけげんそうに尋ねた。浦島は足踏みしながら困った顔をして答えた。 「今うちの兄ちゃんたちがすごい険悪…

刀剣顕現 ~大典太光世~

「あれ、山姥切さん、なんでこんなところで食べているんですか?」 廊下の曲がり角から首をかしげながら問いかけてきたのは秋田だった。淡い桃色の髪が綿菓子のようにふわふわと漂うように近づいてくる。 縁側に座ってうどんを食べていた山姥切は、食べてい…

連隊戦 ~休息~

連隊戦で本丸が活気づく中、本丸の厨房はいつにない緊張感に満ちていた。 その渦の中央となっているのはこの厨房を任されている刀の一人、歌仙兼定。彼が厨房の責を担っている時、誰一人逆らうことは許されない。 袂をひもで丁寧にまとめた姿で、今も厨房の…

連隊戦 ~昼夜変転~

最後の敵を刺し貫く。引き抜かれた刃が大地を照らす最後の陽光に煌めいた。 夕暮れの陽に赤く染まっていた街並みはいつの間にか薄暗くなろうとしている。空は藍に染まり、やがてあたりは闇に閉ざされるだろう。 迫りくる夜の気配を感じて目を眇めた。 また空…

連隊戦 ~部隊交代~

朱き鳥居の中に一歩足を踏み入れる。 その境目を越えるその瞬間、ざわりと体の感覚が変化した気がした。 ここであって、ここでない。 刀に与えられた器もまた生まれ落ちたときに与えられた本性に変性する。殺める刃を封じる鞘から解き放たれたかのごとく。 …

連隊戦 ~出陣~

審神者の自室の奥にある襖を開く。いつもは閉ざされたままのその襖の先にあったのは薄暗い廊下。なぜか足下からほの白い明りの漏れる細い廊下を主は厳かな足取りで歩く。 歩くたびに袴の衣擦れの音が聞こえる。 行き止まりとなった壁には奇妙な紋が描かれて…

留守番 ~安定・清光~

「ずるいー、どうして清光だけ出陣なのさ」 畳の上にごろごろ転がりながら安定は頬を膨らませた。 出陣の準備で戦装束に着替えていた清光は呆れた顔でだらしなく寝転がる相方を見下ろした。 「それはお前が昨日練度をカンストさせたからだろ。この本丸のルー…

月闇 ~堀川・三日月~

長い戦のねぎらいにと本丸で時折開かれる宴は、今日も夜が更けるころには騒がしさもたけなわになっていた。 いつもは皆が食事をする大広間で、にぎやかな笑い声がこだまする。小さな短刀や一部の脇差たちはもう自室に引き上げたようだが、大人のなりをした刀…

友情 ~第四会派~

「さて、この会派は各々の修練を目的とするために集められたのだが」 そう言って森鴎外は目の前の文豪たちを見渡した。 「目的に達するにはできるだけ潜書の回数を重ね、敵と交戦すべきなのだが、少し問題があってな」 「何があるのですか」 常に姿勢を崩さ…

閑話休題 ~花丸~

「おい、あんたさっきから何を探しているんだ」 熱い茶の入った湯呑の乗った盆を持って立ったまま、怪訝なまなざしで主を見下ろした。 うららかな陽が差し込む審神者の部屋の縁側は、天気のいい日は主の座る定位置になっている。今日も気に入りの座布団をそ…

主と刀と ~へし切長谷部~

口元に手を当てて喉を鳴らす。乾いた咳が嫌な感じに部屋に鳴り響いた。 この季節はすぐ体調を崩す。この本丸に来たばかりよりは幾分よくなっているとはいえ、少し風邪をこじらせればなかなかよくはならない。 一向に良くならないのどの調子をなだめようと、…

戦闘 ~第三会派~

薄蜉蝣のごとき頼りなげな人影の群れをすり抜けてゆく。見えているはずのその世界が揺らぎ、目に映る端から砂城のごとく崩れ落ちていった。 このままですべてが想いの汚された黒い墨の中へ消えてゆく。描かれた人も、映し出された景色も、そこに込められた作…

べーすぼーる ~第二会派~

「さあ、べーすぼーるをやるぞ。我こそはと思うものは集まれ!」 意気揚々と正岡子規が宣言したがその場には賛同するものはほとんど、というより皆無だった。 「なんだ、みんな、室内にいるばかりでは軟弱になるぞ。おや、それにしては人数が少ないな」 「先…

兄弟 ~堀川・山姥切~

出陣の報告を終えて主の部屋から退出した堀川が廊下を歩いていると、本丸の庭越しに向こうの廊下で見慣れた白い布が動いているのが見えた。何やらうつむいて考え事をしているのか、こちらには気づいていないようだ。 抱えきれないほどたくさん書類の束を抱え…

食堂 ~第一会派~

「ふむ、面妖な。秋声、これはいかようにして食するのだ?」 目の前に置かれた皿を前にして尾崎紅葉は問いかけた。薄く切った四角い形をしたパンにカツレツというものがはさんであるが、なぜか箸もフォークとやらも添えられていない。 傍らで配膳をしていた…

主と刀と ~山姥切国広~

日当たりのよい縁側の廊下をゆっくりと目的の場所に向けて歩いていた。いつもは誰かとすれ違う廊下だが、今日は不思議と誰とも会わない。 冬の季節とはいえ、風がなく日が当たれば昼間は外に座っていても程よく体が温まる天気だ。こんな日はきっと一日を過ご…

池田屋 ~安定・清光~

夜の静寂を引き裂くような掛け声とともに池田屋へ新撰組の隊士が白刃を抜いて乗り込んでいった。 浅葱色に染めただんだら模様の羽織が闇夜にひらめく。その様子を池田屋の屋根の上から冷めた目で眺める者たちがいた。 「行ったみたいだね」 「今回も何とか間…

大阪城 ~弟探索~②

本丸にしつらえられた転送装置の前で大阪城に出陣する刀たちが集められていた。 朱色に塗られた鳥居の向こうは時空をゆがめられているせいか、間からのぞく空間が歪に揺らめいていた。当本丸ではこの鳥居を潜って時空を渡った刀たちは様々な時代の流れの中で…

大阪城 ~弟探索~①

「大将おまたせ、包丁連れてきたよ!」 すぱんと軽快な音を立てて障子が引きあけられて、大阪城に行っていたはずの信濃藤四郎が現れた。 審神者の部屋にいた山姥切、長谷部がそちらに顔を向ける。 「もう50階まで到達したのか。早かったな」 「ふふっ、短刀…

秘宝の里 ~札~

本丸から転送されて舞い降りたそこは深い霧の立ち込める寂れた山里だった。 どこまでも白く先は見通せない。 ここが昼なのか、夜なのか、それすらもわからなくなる。 「感覚が狂うな、ここは」 誰かがそうつぶやいた。 「道もわからねえ。どうすんだ、隊長」…

秘宝の里 ~結果報告~

「今回の秘宝の里探索の結果だが」 報告書を手に持ちながら皆の前に立った山姥切が読み上げる。 本丸の会議室に集められた刀たちは彼を囲みながら思い思いの場所に座っている。山姥切の傍らには定位置となったふかふかの座布団に座りながらのんびりと審神者…

秘宝の里 ~第一部隊~

霧が立ち込める。先など何も見えない。 彼らの行く先に待ち受けるものを決めるのは引かれた一枚の札。 第一部隊隊長、山姥切国広は手を伸ばし、宙に現れた一枚の札に手を触れた。 「玉、だな」 玉の描かれた札を確認して手を放す。すると札は輝く数個の玉に…