閑話休題 ~花丸~
「おい、あんたさっきから何を探しているんだ」
熱い茶の入った湯呑の乗った盆を持って立ったまま、怪訝なまなざしで主を見下ろした。
うららかな陽が差し込む審神者の部屋の縁側は、天気のいい日は主の座る定位置になっている。今日も気に入りの座布団をそこへ引っ張り出し、足を投げ出して座っていた。
主は最近ずっと夢中になっている板のような機械を指で滑らせながら熱心に画面を見つめていた。指がその表面を横に滑らせるとつられるように絵が変わっていく。
「うん、ちょっと探し物をしてるだけですよ。ああ、ここも売り切れ。やはりよその審神者も同じこと考えているのでしょうか」
意味の分からないことをぶつぶつ言いながら、いつになく真剣に手元をにらんでいる。
呆れた顔をして山姥切は審神者の丸にさの文字が入った湯呑を置いた。
「なにか探す暇があったらこの湯呑のかわりも探したほうがいいぞ。加州と乱がこんな湯呑はかわいくないと言って、あんたに似合うかわいい湯呑の贈り物をすると言っていたからな。それがいやなら自分で・・・」
「あった!」
目を輝かせた主は両腕を伸ばして、縁側に投げ出した足をパタパタさせた。
「見つけたよ、切国! ほら、どう?」
画面を目の前に突き付けられて、山姥切はうっと言葉を詰まらせた。
「こ、これは・・・」
「そう、あのフラワーロック! 花丸に出てたあれですよ! どこ見ても売り切れでだったからよかった。やっと再入荷してたの見つけました。ほら、これならサングラスバージョンであれにそっくりでしょう?」
「・・・あんた人の話を聞いているようで聞いてないな」
「え、切国も本当はこういうの好きでしょう? ほしくないですか?」
「だから、あの花丸の俺とここにいる俺は全く別だと何度言えばわかるんだ。俺はこれを欲しいと思ったことは一切ない」
「でもこの間歌仙に夜中にその布を洗濯されていたでしょう。あれは?」
「あれは歌仙もあれを見てこれはいい考えだとやられただけだ。だがあいつは朝食の支度もあるからな。さすがに夜中に洗濯するのは朝に眠くてつらいと一度試しただけであきらめたみたいだが」
目を険しくして山姥切は自身の布を握り締めた。
今まとっている布はその時歌仙に綺麗に洗濯されたものだ。まだ布に洗剤の花のような香りが残っている。
「うちの歌仙の事ですからまだあきらめてはいないと思いますよ。ほかの方たちに今後はあまりに汚れているに洗濯を拒否する切国に対しては大人数がかりで不意打ちも構わない、力づくで行くって言っていましたから」
「なっ、歌仙の奴! この間逃げたのをまだ根に持って・・・いや、とにかく俺はそんな動く花はいらないからな!」
大声で言い放って乱暴な足取りで立ち去って行った。
残された主はひらひらと花が舞い踊っている画面を見下ろして、くすりと笑った。
「また怒らせてしまいましたね。それにしてもあの話は別の君の可能性を見た気がして私は楽しかったんですよ」
花丸最終回を見て勢いで書いてしまった。
フラワーロック、楽しいですね。最後にもちゃんと出てた・・・。
あちこちでよく見かけるネタですが、うちでは拒否られました。やっぱりな。
そのうち布かぶったフラワーロックが商品化されていたらすごいんですが。
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