食堂 ~第一会派~
「ふむ、面妖な。秋声、これはいかようにして食するのだ?」
目の前に置かれた皿を前にして尾崎紅葉は問いかけた。薄く切った四角い形をしたパンにカツレツというものがはさんであるが、なぜか箸もフォークとやらも添えられていない。
傍らで配膳をしていた門下の徳田秋声が呆れを隠しもせずに答えた。
「それは手で持って食べるんですよ。先生のいた時代にはなかったかもしれませんが、アンパンだってそうやって食べるでしょう」
「ふむ、手で持って食べるのか。だがこのような食べ物は鏡花が見たら顔色を変えるであろうな。あの者は手に触れたたべものはけがらわしいと厭うていたゆえ。・・・ただこれでは食べるために触れば手が汚れるな。秋声、何か手を拭くものをここへ持ってきなさい」
かつての門下生に命じるその声に遠慮などない。どこまでもごく自然だ。
いささか乱暴に水の入ったコップと水で濡らして絞った真新しいお手拭の布を置いた秋声は、全く気にしない師匠に軽くため息をついた。聞こえないように口の中で小さくいつものごとく愚痴を呟く。
「鏡花がここに転生してこないからって、なんで僕が先生の世話係にされなきゃならないんだろう。鏡花がいなくてよかったっていったけど、これだったら早く来てもらった方が体力的にも精神的にも楽だよ」
「何か言ったか、秋声」
「いいえ、なんでもありません!」
そのやり取りをテーブルの向こうに座る織田作之助と室生犀星はじっと見つめていた。
「なんやろなあ、あの尾崎紅葉とゆう先生はあんな世間ずれ・・・いや、のんびりしたお方だったんやなあ」
「でも連載当時の人気はすごかったそうだよ。まあ、俺も門下生の秋声さんほどよくはしらないけどな」
「犀星先生は秋声とは同郷やろ。話くらいしなかったんか?」
「世代が少しずれてたからなあ。それに文学の路線も当時は文学と詩で方向性が違ったもんな。俺は朔たちと交流してたし」
図書館に併設された食堂は今は彼らだけだ。今日のメニューはカツサンドというものだが、織田としては量的にも物足りなくやはりいつものカレーが食べたい。さっさと食べ終わってしまった彼は目を動かして軽く食堂内を見渡した。
「しっかしここはおもろいとこやなあ。時代の違う文豪が一堂に集まっとるやろ。わしらの時代には残された作品でしか知らんえらい先生方が目の前におるんや。まさか犀星先生ともまた会えるとは思えんかったわ」
「確かにな。それにまだ新しい文豪の先生方が増える予定だという話を聞いたぞ」
「どうだか。ここの司書はんはえろう引きが悪いやんか。増えるのもいつになるんやろなあ。この間も大量の洋墨賭けた潜書で失敗したって聞いたでえ」
現在、司書の助手を引き受けている犀星はテーブルに額を付けて頭を抱えた。転生させるのが難しいと言われる文豪はこの図書館にはほとんど表れていないのは事実だった。
報告のたびに司書の沈黙が重くなっていくのを室生は身をもって知っていた。今日も報告の間頷く以外司書は一切言葉を発してなかった。
「・・・それはいわないでやってくれ」
「しっかし先生も苦労人やったんやなあ。誰もやりたがらん仕事押し付けられといて結局断らんと。恩のある先生に悪いとはおもっとるけど、司書の助手なんてけったいな仕事わいももうやらんでえ。なんせここにいる文豪の先生方とやらは気難しい人が多いもんなあ。面倒でならんわ」
初代の助手でありながら早々にその役目を犀星に押し付けた形になった織田はそういって軽快に笑った。
この四人の中で一番犀星が言葉づかい難しい! 書いてて初めて気づいた・・・。なれたらたぶん直すよ。
意外と大阪弁の織田作が一番書きやすかったなあ。
文アル書いてみたけど、調べれば調べるほど頭痛くなる。
文豪同士の交流はよく調べたら出てきそうでこわい・・・。
有名なエピソードじゃないのは転生したときにちょっと忘れてるくらいに思ってくれたらいいなって都合良すぎか。
潜書はええ、引き悪いですとも! ここのレシピなんて刀と違ってあってないようなもんですし!
レア系は朔以外来ませんがな!
先に行って自力で出すしかないのかなあ。
潜書主力会派(戦闘特攻班)
第一会派 室生犀星
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