ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

2017-01-01から1年間の記事一覧

秘宝の里 ~隊長 一期一振~

「今回私たちの出陣が遅れたことについて燭台切殿から直接謝罪の言葉をいただきました。ですから彼を責めてはいけませんよ」 一期一振は弟たちを前にして神妙に告げた。彼らもまた尊敬する長兄の言葉を真面目に聞いている。 その中で前列に足を崩して座って…

夕暮れ ~来派~

太古より重く静謐な空気に守られていたはずの聖域が揺れた。 神社の閉ざされた沈黙を破る不穏な気配を感じて、己の本体のかたわらでいつ目を覚ますともなく微睡んでいた蛍丸は夢の淵より舞い戻った。いまだ夢を漂ううつろな目をこすりながら、穏やかなこの地…

秘宝の里 ~隊長 小狐丸~

「おー、すげえな五虎退。懐入り込んで一撃か。機動速くなけりゃ出来ねえ技だよな」 敵に止めを突き刺した太刀を引き抜いて獅子王は感嘆の声を上げた。 襲ってきた槍の部隊はすべて地に倒れ伏せさせた。この程度の強さならば高速で攻撃を仕掛けてくる槍とて…

野宴 ~次郎太刀~

「酒はのめのめ~、飲まれるなぁ~っと」 なみなみと酒を注いだ黒塗りの升を手に太郎太刀は上機嫌で声を張り上げた。張りのある歌声が広々とした野に響き渡る。緑の草が萌えはじめた春の野は穏やかな日の光があたりに優しく降りそそぐ。暑くもなく、寒くもな…

秘宝の里 ~隊長 明石国行~

「なんで長谷部はんが自分の隊に入りますのや。面倒ですなあ」 審神者の部屋に呼び出された明石国行は事の次第を聞いて明らかに不満げな言葉を漏らした。それを聞いた瞬間、目の前で座っていた長谷部の額にくっきりと青筋が浮かんだ。 「だまれ、隊長の貴様…

秘宝の里 ~隊長 燭台切光忠~

「そういうわけで僕が隊長になって秘宝の里に出陣することになったから、しばらく厨房の仕切りは頼めるかい? 歌仙君にばかり負担をかけるようになってしまうけど、帰ってきたら僕も手伝いくらいならできるから」 朝食用の味噌汁をかきまぜながら燭台切は申…

秘宝の里 ~隊長 三日月宗近~

「はて、この箱はなんだ?」 どこからどう見ても何の変哲もない箱である。上に丸く穴があけられているほかは外に何も書かれていない。頭をくぐらせて下まで覗いてみたが、そこにまた穴があるわけでもない。 それともこの穴の中に何やら罠が仕掛けられている…

蛍狩り ~蛍丸~

夜闇の中に淡い黄緑色の光が舞う。 強く、弱く、見る者を水面のほとりへ誘うかのように。幻の光は手招いて、目を見開けばそこは幽玄の里。 見慣れたその景色はたとえ夜でも見間違えることはない。 本丸の鳥居を抜けて、舞い降りて目に飛び込んできたその光景…

遊びをせんとや ~鶴丸国永~

現世はまこと面白き。 遥か昔に聞きし懐かしきその調べを知らず知らずのうちに口ずさむ。 ――遊びをせんとや生まれけむ 審神者の力により本丸にこの身が刀より生じてから、人の身であるのは刀生にしてほんの瞬きに過ぎない。だが、館の奥深く、時には陽の光の…

大阪城 ~黒田組~

「さあ待ちに待った大阪城ばい!」 こぶしを振り上げて、隊長に任命された博多藤四郎は元気よく威勢を上げた。だがほかの面々はどこか冷めたような表情をしている。 頭の後ろに両手を組んで厚藤四郎が呆れた声を出した。 「おまえ大阪城もう何回目だよ。いい…

秘宝の里 ~隊長 長曽祢虎鉄~

「最近退屈すぎるよね。俺たちずーっと本丸にいるし。道場の手合いも飽きたし、そろそろ外にでも出陣して敵の首落としたいんだけど」 部屋でごろごろしていた大和守安定が急に真顔になって物騒な言葉を言い放った。だが同じ部屋にいる新撰組の面々は一瞬彼に…

秘宝の里~隊長 同田貫正国~

「こいつで最後だ」 地面に横たわったままわずかに動いていた敵の短刀に容赦なく切っ先を突き刺した。 情けは無用だ。殺らなければ殺られる。情にほだされて逃せばいずれまた自分たちの命を狙いに来る存在だ。 こいつらと俺たちの間には相容れるものなど何も…

江戸城~村正探し~

「僕が隊長で本当にいいのかな」 何もない空き地を先頭に立って踏みしめた小夜左文字が足元を見ながらぽつりとつぶやいた。 進んだ先はまたはずれだ。選ぶ道は今日もどうも引きが悪い。昨日だって二回は江戸城の最奥まで到達できずに、本丸へと引き戻された…

秘宝の里 ~隊長 鳴狐~

縁側の廊下に音もなく一片の花びらが舞い落ちる。 見上げれば本丸の屋根に覆いかぶさるように枝を広げた桜の花が風に吹かれてその盛りを過ぎ去ろうとする花を散らしていた。 うららかな春の陽だまりの中で、いつもは肩に乗っている狐の眷属も廊下の上に丸く…

秘宝の里 ~隊長 大倶利伽羅~

縁側に座っていた大倶利伽羅の目の前にいきなり皿が差し出された。皿の上にはこぶしほどの白いまんじゅうが二つ乗っていた。 「加羅坊、今日のおやつを持ってきたぞ」 聞き飽きるほど聞いた軽快なその声に、大倶利伽羅の眉根が上がった。こんな風に自分へ親…

再会 ~芥川・菊池~

このほの暗い闇のほとりにどれくらい佇んでいることだろう。 いつもと同じように床に就き、眠れぬからといつもよりも多くの睡眠薬を服用した。 その夜の眠りはどこまでも深く、気づけばこの闇のほとりにただ一人立っていた。 誰もいないこの場はとても静かだ…

月見 ~不動・薬研~

暗い夜の空にぽつんと浮かぶ月はいつもよりも白く輝いて、手を伸ばせばもしかしたら届くんじゃないかって思うほど近くに見える。 でもそんなことはない。望むものがもう手に入らないのと同じで、どんなにほしいと願っても月に手が届くなんてことは絶対にない…

足利の地に生まれ出でし

【注】 刀剣乱舞に実装されていない刀が出ます。史実捏造注意。 暗き室の奥で赤々と燃え上がる焔が浮かび上がる。 その煌々と輝きながら燃え盛る炎の中へとうの昔に老境へとさしかかった男が真剣な面持ちで鉄の棒を差し入れていた。 炎の赤を瞳に映し、ただ…

お菓子作り ~包丁藤四郎~

最初に目に入ったのはぴかぴか銀色に光るたくさんの道具だった。 通り過ぎようとしていた包丁藤四郎は窓から差し込む陽光にきらめくそれらに引き寄せられて厨房の中へ入っていった。小さな体を背伸びして、作業台の上を覗き見る。 いままで食事の準備で厨房…

鍋の宴 ~織田・太宰・坂口~

【注】坂口安吾・織田作之助・太宰治の回想・手紙ネタバレあるので注意。 「地獄からの招待状や・・・」 届けられた一通の手紙を読むなり、織田作之助は顔を青ざめさせた。 文面にはこうある。 『織田作之助へ せっかく現世でそろったことだし、太宰と一緒に…

観察 ~太鼓鐘貞宗~

俺は太鼓鐘貞宗。この本丸で今のところ最も新しく来た刀だ。 ここにはたくさんの刀たちがいる。みっちゃんや加羅ちゃん、つるさんとか俺の知っている伊達の刀だけじゃなくて、他家のあったことのない名刀や、千年も長く存在するとんでもなく古い刀もいる。天…

捕獲 ~後藤・信濃~

日中は温かな日差しが差し込むようになり、庭につながる廊下側の障子は外の空気を入れようと開け放たれていた。強い風はなく、頬を撫でるくらいの心地よい早春の暖かさが部屋の中へ陽気を運んでくる。 その審神者の部屋では自身の机に向かいながら、置かれた…

大阪城 ~博多とゆかいな短刀たち~

「待ちに待った大阪城ばい! はりきっていくと!」 目を黄金の小判のごとく煌めかせ、博多藤四郎はぐっとこぶしを突き上げた。 つい先ほど急いで修行から帰ってきたばかりだが、疲れというものを全く感じさせないのは目の前の大阪城に埋蔵されている小判に心…

返礼② ~その後~

【注】返礼①を読めない方は三日月が山姥切にいたずらを仕掛けた後と思ってくれれば何とか読めるかも。 ですがほんのりみかんばです。まだ片方よくわかってません。 触れるギリギリのところで三日月の動きが止まる。自分を見つめていたその眼が、切なげにふっ…

返礼① ~山姥切・三日月~

【注】最後にほんわかみかんば要素あります。 でも付き合ってはいません。しかも片方は現状をよくわかってません。 苦手な人は積極的な回避を 「国広や、そこにおったか」 本丸の庭に面した縁側の廊下を山姥切国広がぼんやりと歩いていると、三日月宗近に見…

刀剣入手と覚書

○自分本丸の刀剣入手順(年月はあいまいなのでかなり省略) 書き出すとあとで便利だね・・・そして記憶はあいまいだね (2017/12/18現在) 【注】練度カンスト ★極 山姥切国広(初期刀) 厚藤四郎(初鍛刀)★ 愛染国俊★ 五虎退★ 今剣★ 歌仙兼定 前田藤四郎★ …

刀剣乱舞 自分本丸設定①

ぼんやり考えていた設定をまとめてみようと。 自分本丸設定なのでこれを見て苦手な方は本編の閲覧注意を。 覚書なので特に見なくても読めるとは思います。 随時修正あり。【注】一部CP要素、メタ発言あり。 【審神者】 男子中学生くらいの少年。相模国の審神…

腐れ縁 ~中原・太宰~

「今度こそ芥川先生を連れて帰ってくる! 俺の力を見てろよ、志賀直哉!」 紅潮した顔で意気揚々と宣言した太宰の後ろで、志賀が腕を組んだまま冷めた目で眺めていた。 「おー、がんばれよー」 その口調もどこかおざなりだ。もう何日も芥川探しで潜書し続け…

記事 ~田山・島崎~

「何書いてんだ、藤村」 図書館のサロンの片隅にあるテーブルで何やら書き物をしている島崎藤村の肩口を田山花袋は覗き込んだ。 書き散らされてテーブルいっぱいに広げられた原稿用紙にはびっしりと文章で埋め尽くされていた。 「えー、なになに? 太宰君の…

秘宝の里 ~隊長 山姥切国広~

「今日、和泉守の楽器がそろったそうだよ。これで現時点で全員分の近侍曲を受け取ることができますね」 小さな背丈を大きく見せるかのように、背筋を伸ばして正座をしている主は最近落ち着いて凛とした雰囲気をまとうようになっている。それはただ姿勢がいい…