ゆめうつつ

刀剣乱舞・文豪とアルケミスト関連の二次小説。主にコメディ中心。

月見 ~不動・薬研~

暗い夜の空にぽつんと浮かぶ月はいつもよりも白く輝いて、手を伸ばせばもしかしたら届くんじゃないかって思うほど近くに見える。 でもそんなことはない。望むものがもう手に入らないのと同じで、どんなにほしいと願っても月に手が届くなんてことは絶対にない…

足利の地に生まれ出でし

【注】 刀剣乱舞に実装されていない刀が出ます。史実捏造注意。 暗き室の奥で赤々と燃え上がる焔が浮かび上がる。 その煌々と輝きながら燃え盛る炎の中へとうの昔に老境へとさしかかった男が真剣な面持ちで鉄の棒を差し入れていた。 炎の赤を瞳に映し、ただ…

お菓子作り ~包丁藤四郎~

最初に目に入ったのはぴかぴか銀色に光るたくさんの道具だった。 通り過ぎようとしていた包丁藤四郎は窓から差し込む陽光にきらめくそれらに引き寄せられて厨房の中へ入っていった。小さな体を背伸びして、作業台の上を覗き見る。 いままで食事の準備で厨房…

鍋の宴 ~織田・太宰・坂口~

【注】坂口安吾・織田作之助・太宰治の回想・手紙ネタバレあるので注意。 「地獄からの招待状や・・・」 届けられた一通の手紙を読むなり、織田作之助は顔を青ざめさせた。 文面にはこうある。 『織田作之助へ せっかく現世でそろったことだし、太宰と一緒に…

観察 ~太鼓鐘貞宗~

俺は太鼓鐘貞宗。この本丸で今のところ最も新しく来た刀だ。 ここにはたくさんの刀たちがいる。みっちゃんや加羅ちゃん、つるさんとか俺の知っている伊達の刀だけじゃなくて、他家のあったことのない名刀や、千年も長く存在するとんでもなく古い刀もいる。天…

捕獲 ~後藤・信濃~

日中は温かな日差しが差し込むようになり、庭につながる廊下側の障子は外の空気を入れようと開け放たれていた。強い風はなく、頬を撫でるくらいの心地よい早春の暖かさが部屋の中へ陽気を運んでくる。 その審神者の部屋では自身の机に向かいながら、置かれた…

大阪城 ~博多とゆかいな短刀たち~

「待ちに待った大阪城ばい! はりきっていくと!」 目を黄金の小判のごとく煌めかせ、博多藤四郎はぐっとこぶしを突き上げた。 つい先ほど急いで修行から帰ってきたばかりだが、疲れというものを全く感じさせないのは目の前の大阪城に埋蔵されている小判に心…

返礼② ~その後~

【注】返礼①を読めない方は三日月が山姥切にいたずらを仕掛けた後と思ってくれれば何とか読めるかも。 ですがほんのりみかんばです。まだ片方よくわかってません。 触れるギリギリのところで三日月の動きが止まる。自分を見つめていたその眼が、切なげにふっ…

返礼① ~山姥切・三日月~

【注】最後にほんわかみかんば要素あります。 でも付き合ってはいません。しかも片方は現状をよくわかってません。 苦手な人は積極的な回避を 「国広や、そこにおったか」 本丸の庭に面した縁側の廊下を山姥切国広がぼんやりと歩いていると、三日月宗近に見…

刀剣入手と覚書

○自分本丸の刀剣入手順(年月はあいまいなのでかなり省略) 書き出すとあとで便利だね・・・そして記憶はあいまいだね (2017/12/18現在) 【注】練度カンスト ★極 山姥切国広(初期刀) 厚藤四郎(初鍛刀)★ 愛染国俊★ 五虎退★ 今剣★ 歌仙兼定 前田藤四郎★ …

刀剣乱舞 自分本丸設定①

ぼんやり考えていた設定をまとめてみようと。 自分本丸設定なのでこれを見て苦手な方は本編の閲覧注意を。 覚書なので特に見なくても読めるとは思います。 随時修正あり。【注】一部CP要素、メタ発言あり。 【審神者】 男子中学生くらいの少年。相模国の審神…

腐れ縁 ~中原・太宰~

「今度こそ芥川先生を連れて帰ってくる! 俺の力を見てろよ、志賀直哉!」 紅潮した顔で意気揚々と宣言した太宰の後ろで、志賀が腕を組んだまま冷めた目で眺めていた。 「おー、がんばれよー」 その口調もどこかおざなりだ。もう何日も芥川探しで潜書し続け…

記事 ~田山・島崎~

「何書いてんだ、藤村」 図書館のサロンの片隅にあるテーブルで何やら書き物をしている島崎藤村の肩口を田山花袋は覗き込んだ。 書き散らされてテーブルいっぱいに広げられた原稿用紙にはびっしりと文章で埋め尽くされていた。 「えー、なになに? 太宰君の…

秘宝の里 ~隊長 山姥切国広~

「今日、和泉守の楽器がそろったそうだよ。これで現時点で全員分の近侍曲を受け取ることができますね」 小さな背丈を大きく見せるかのように、背筋を伸ばして正座をしている主は最近落ち着いて凛とした雰囲気をまとうようになっている。それはただ姿勢がいい…

秘宝の里 ~隊長 和泉守兼定~

障子を開け放つと和泉守は元気よく叫んだ。 「長曽祢さんよ、俺たちと出陣しねえか・・・って、おめえら!」 部屋の真ん中で両腕に加州と大和守をぶら下げて座り込んでいる長曽祢が申し訳なさそうに手を挙げた。 「すまんな、先約が入っちまった」 「遅いよ…

秘宝の里 ~隊長 宗三左文字~

「小夜と一緒に出陣できないとはどういうことですか!」 近侍の仕事部屋を訪れた宗三左文字は山姥切に抗議の声をあげた。だが彼は自身に向けられた非難にも顔色一つ変えず、ただ静かに見返す。 「小夜左文字は第三陣で出陣した長谷部の部隊に入っている。今…

秘宝の里 ~隊長 へし切長谷部~

「我が隊は敵陣突破を最優先に編成を行う。ゆえにほかの奴らのように、情や好みによって人選をするなどもってのほかだ」 早々に宣言した長谷部は机の上に今までの戦績を記した帳面を積み重ね、ずっと熟考している。 机に向かったまま小一時間動こうとしない…

後味 ~山姥切・三日月~

三日月宗近という名を持つあの刀はよくわからない奴だと思う。 俺よりもはるかに長い時代を渡ってきた刀ゆえか、突然あちこちに飛んでゆく思考も全く理解できないし、次に何をするか単純な行動すら予想もつかない。 そもそもこの国の歴史にその名を残す名刀…

秘宝の里 ~隊長 大和守安定~

「さあ、誰と一緒に出陣しようかな」 「おまえねー、万屋に行くみたいに気軽に言ってんじゃないよ」 貸してもらった名簿を見ながら、大和守は顎に指を当てて暢気な声をあげた。隣にいた加州がすかさずそれを諌める。 「あそこは相当強い敵が出るって言ってた…

秘宝の里 ~順番~

「第一陣は前に伝えたとおり陸奥守が隊長で出陣する。それで次に出陣する順番だが該当する者達で話し合いを・・・」 説明している山姥切の言葉を思いっきり遮って、大和守が威勢よく手を挙げた。 「はいはいはい! 僕行きたい!」 立ち上がってアピールする…

御神力 ~石切丸~

紙垂が大きく左右に振れながら幣が払われる。室内にしつらえられた白木の神棚に向かって石切丸は厳かに祝詞を唱え、深く一礼した。 そして正座したまま手を使って静かに後ろに向き直る。 「主、審神者としての修行の成果はいかがですか?」 両掌を胸のあたり…

黒田組 ~へし切・日本号~

「よう、長谷部。相変わらず堅苦しそうなつらしてるな」 今日も気安げな日本号の言いざまに、長谷部は思わず顔をしかめる。無言で睨み付けているにもかかわらず、気づかないのか気づいていないふりをしているのか、日本号は日参して長谷部を酒に誘う。 「ま…

会派紹介 2017年2月4日時点

会派一 織田作之助 最初に選ばれた文豪。初代の司書の助手だったが、人が増えて面倒になってきたため、室生に押し付ける形で譲る。 生来のピンチの時でも楽天的な思考をできるゆえ、会派を盛り上げる。 徳田秋声 チュートリアルからなんだかんだで一番手に定…

學問ノススメ ~試験終了~

「やった! 最終試験合格だ!」 「・・・何十回目かもう数えるのも忘れたけどね」 「朔、それは言わない約束だろ」 頬を膨らませて怒る室生を北原は口元でかすかに笑う。 「君たちは本当に仲が良いね。性格も姿形も何もかも違うはずなのに、そうだな、魂の色…

秘宝の里 ~隊長 陸奥守吉行~

「待ちに待った出番ぜよー!」 喜び勇んで両腕を天に突き上げた陸奥守は目を輝かせて振り向いた。 「めんばーはわしが好きにきめてもええんじゃな?」 「ああ、最終まで確実に到達するために大太刀を二振り入れれば、あとは隊長権限で好きに決めてかまわない…

學問ノススメ ~北原一門~

「そんなこともあったかな。でも僕などは不良生徒で結局学校はやめてしまった」 自嘲気味に、それいてどこかさびしそうに北原白秋は告げた。目を閉じて思い出せば、つまらないと鼻から馬鹿にしていたいい加減な学校生活ばかりが思い浮かぶ。 だがいくら待っ…

立合い ~大包平・天下五剣~

「なんで今日も僕たちが立合いを見てなきゃなんないわけ? そもそも僕たち内番じゃないじゃん」 両手を後ろ手に組んで大和守は不満げに頬を膨らませた。加州はそんな相方の不満を容赦なく一蹴する。 「しかたないだろ。主が俺たちにって頼んだから。文句言わ…

伊達者 ~太鼓鐘・燭台切~

食卓の上に置かれたずんだ餅をまったく手を付けないで、太鼓鐘貞宗は眉を寄せながらじっと見つめていた。 「どうしたの貞ちゃん、ずんだ餅食べないの。もしかして実は嫌いだったとか・・・」 おやつを配り終えた燭台切がいまだ食べようとしない太鼓鐘に慌て…

褒美 ~三日月・山姥切~

「やっと連れてまいったぞ」 出陣から帰ってきた三日月が戦装束の袂をひらりとよけさせると、その後ろから子供の姿をした短刀が現れた。青みがかった髪を後ろに一つで結わき、自信に満ちた笑顔を浮かべた短刀は開口一番に元気な名乗りを上げた。 「俺は太鼓…

顕現 ~数珠丸~

「切国、みんなは・・・」 手入れ部屋の前で立っていると、息を切らして主が廊下の向こうから現れた。そういえば主がついてくるのを待たずに外へ飛び出したのをいまさらながらに思い出す。 打刀の中でも機動の早い山姥切に、人間の、しかも体力などかけらも…